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「なんだ、この程度なのか」
「…っ」


ペインのそんな挑発に悔しそうに唇を噛むユウナの姉ちゃん。姉ちゃんはもう戦えるような状態じゃねぇはずだ。

さっき使った術は昔、綱手のばあちゃんが大蛇丸と戦った時に使ってた術と同じ模様をしてる。ならきっともう体は限界なはずだってばよ。現に今ユウナの姉ちゃんは肩で息をして苦しそうな顔してるし体だって傷だらけだ、いろんなとこから血も出てる。

きっと、それでもまだ姉ちゃんが動けてるのは、木ノ葉やカカシ先生をこいつにやられた悔しさからだってばよ。


俺ってば、すげぇ姉ちゃんの気持ちがわかんだ。
エロ仙人が戦死したって聞いた時、わけがわかんなかった。あんなに強ぇエロ仙人が死ぬはずねぇ、いなくなるわけねぇって、これは夢だってそう思い込もうとした。

でも、それは違った。
執務室を飛び出してった俺をまた呼び出した綱手のばあちゃん。なんだと思いながら呼ばれた屋上に行くと、そこにはエロ仙人が眠っててよ。ユウナの姉ちゃんがここまで連れてきてくれたんだとそう言ったばあちゃんが、真っ白な顔して満足そうに微笑むそんなエロ仙人を見つめながら言ったんだ。


『自来也はお前に想いを、火の意志を託していった。いろんなものをお前に残していった。過酷と分かりきった戦場にも皆を救うためにたったひとりで飛び込んでいった。お前に、その覚悟の意味がわかるか』


真っ赤に腫らした目でそう言いながら俺を見たばあちゃん。
いつも強気なばあちゃんのそんな姿を見て、俺ばっかが悲しんでちゃいけねぇなって思ってよ。きっとエロ仙人もそんなこと望んでねぇ、俺に悲しんでもらいたくて死んだわけじゃねぇってよ。だから俺はじいちゃん仙人に仙術の修行をつけてもらった。

エロ仙人みたいに、格好良い忍になりてぇ。そう思ったから。

大切な人を失った俺だから、姉ちゃんの気持ちは痛いほどわかる。姉ちゃんにとってカカシ先生は誰よりも大切な人で、“何よりも守りたかった人”、そう言った姉ちゃんの言葉に嘘がねぇことはよくわかる。だからこそ姉ちゃんは今無理しててでも立ち上がる、ペインを睨みつける。

…でもよ、ユウナの姉ちゃん。
姉ちゃんのことが大切な奴がここにもいるってこと、忘れてねぇよな?


「!…ナルト、」
「ユウナの姉ちゃん。姉ちゃんはもう充分やった、カカシ先生もきっとそう思ってると思う。だからよ、」
「…っ」
「やっぱ俺に任せてくれ。姉ちゃんの分もカカシ先生の分も、俺があいつをぶっ飛ばすからよ」


ユウナの姉ちゃんのことが大切な俺だから、もうこれ以上姉ちゃんの苦しむ姿は見たくねぇんだ。

だから、俺がこいつをぶっ飛ばす。


「それに、昔約束しただろ?」
「…」
「ユウナの姉ちゃんは、俺が守るってよ」
「!」


驚いたように固まる姉ちゃんの前にすっ、と立つ。


「今度はお前か、九尾」
「…俺は九尾じゃねぇ。木ノ葉の里のうずまきナルトだ!!」


飛び出した俺の後ろからユウナの姉ちゃんの俺を呼ぶ声がする。

安心してくれ、ユウナの姉ちゃん。
俺ってばきっと姉ちゃんとの約束、果たすからよ。





呼吸はあなたに教わった




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