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「珍しいじゃねぇか。お前から飲みに誘うなんてよ」
「はは、そうだね。ごめんね急に呼び出して」


イタチくんと会ってから二日が経って、昨日のうちにいろいろ整理した。
私には里を抜けるしか木ノ葉と綱手様を守る方法はない。だから最後に大切なみんなに会って行くことにした。

まず最初に呼び出したのはアスマ。なんだかんだ私を可愛がってくれた大切な同期。


「で、話ってなんなんだ?」
「うん、」


「まずは何か飲みなよ」とメニューを手渡す私をアスマは怪訝そうな目で見る。
いつも通りにしてるつもりなのにやっぱりわかっちゃうのかな、なんて思いながら苦笑い。

酒が届き、乾杯をして口をつける。
正直味はしないけど、でもアスマに言っておきたかったことがある。


「ねぇ、アスマ」
「あ?」
「…三代目のこと、守れなくてごめん」


アスマの父親でもあった三代目。あの方を守れなかったのは私の不甲斐なさ。それは私のひとりよがりで勝手なことだってわかってるけど、でもなにより謝りたかった。


「…なんでお前が謝んだよ。俺だって一緒じゃねぇか」
「ううん、私があの方を守れなかったの。一緒に木ノ葉を守ってくれって言われたのに。情けないよね」
「…なぁ、ユウナ。俺ァよォ」
「…」
「昔は親父のことが嫌いだったんだよ。家のことより里のことばっかでな。そんな親父に反発して里を離れた時期もあった」
「…」
「でもよ、この歳になってやっとわかったことがあってな」
「…」
「俺の火の意志ってやつ」
「!」


きっ、と口角を上げてそういうアスマの言葉に目を見開いた。


「俺の火の意志は、里を担うこれからの子供達を守ることなんだよ」
「…子供達、」
「火の意志っつー言葉は親父の受け売りかもしんねぇが、でもたしかに俺の中にそれはあんだよ」
「…」
「昔、親父に聞かれた玉っつー言葉の意味、その答えが俺の火の意志なんだ。それに気づいたのが親父が死んでからなんだから、俺もとんだ親不孝もんだよな」


そう言って自嘲気味にジョッキを傾けるアスマに首を振った。


「そんなことないよ。きっと三代目はアスマがその意味に気づいたことを喜んでるよ」
「…だといいけどよ」
「アスマにはアスマの、私には私の火の意志がある」
「お前のはなんだよ」
「…この前、カカシに火の意志の話を聞いて思ったんだ。私の火の意志は、大切なものを守ることだって」
「大切なもの?」
「うん。大切な人とか、大切な里とか、自分が大切だと思うもの全部」
「そうか」


そう言いながら汗をかいたジョッキを握りしめた。
大切な人とこうして酒が飲める。これだけでも幸せだなぁなんて。


「ね、アスマ」
「あ?」
「ありがとう」
「んだよいきなり」
「んー、なんとなく言いたくなった!」


そう言ってにっ、と笑うと、「お前は変わんねえな」って呆れたようにアスマも笑ってくれた。


「それから、紅と仲良くやんなよ」
「ブッ!!おま、なんでそれ!?」
「いやバレバレだから。…アスマ、」
「…んだよ」
「幸せになんなきゃ許さないからね!」
「お、おう」


デカイ図体して真っ赤な顔をするアスマの背中をばしんと叩いてまた笑った。
もうすぐお別れだけど、紅と木ノ葉を頼むよアスマ。それから、カカシを支えてあげてください。

そう思いながらジョッキを傾けた。




幸せ願望論




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