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「ユウナ、聞きたいことがある」


そう言って呼び出されたのは自宅近くの公園。
夜になって静まり返る公園のブランコに並んで座るのはサスケ。


「どうしたの、急に話って」
「…」


おいおい呼び出しといてだんまりかよ。
そう思いながらも、この前とは少し違うサスケの雰囲気にその言葉を飲み込んだ。考え込むように地面を睨みつけている。なにか、私にしか出来ない話があるのかな。


「…カカシに聞いたんだが、あんた昔家族を亡くしたんだろ」
「…あぁ、うん。そうだよ。父さんも母さんも兄ちゃんも、任務でね」
「…殺した奴に復讐しようとは思わなかったのか」


地面を睨んでいた目を私に向けてじっと見据えるサスケ。
たしかうちは一族は、私が修行に出ている間にサスケを残して全員殺されたんだっけ。その頃まだ小さかったはずのサスケは、一族を皆殺しにした兄に復讐するそのためだけに生きてるんだってカカシが言ってたな。


「…たしかに、そう思った時期もあった」
「…」
「なんで私の家族なんだ、なんで父さんが母さんが兄ちゃんが、って何度も思ったし未だに思う時もある。だから大切な存在を失うことが怖くなって、ひとりでいたいって思って壁を作ってたの。誰も私に近寄らないように、誰も大切な存在にならないようにってね」
「…」
「でも、あることを教えてくれた人たちがいたの」
「…あること?」
「…“お前は独りじゃない”って」
「!」


あの日々のことは思い出すだけで嬉しくて、同時に胸が苦しくもなる。
私が力不足なせいで、無力なせいで、オビトとリンは亡くなってカカシは荒れた。私を救ってくれた三人を、私は救えなかった。父親を失ったカカシにまた辛い思いをさせてしまった。

本当ならそんな私に何かする権利なんてないと思う。そう思ったんだけど、二人の名前が刻まれた慰霊碑の前で何度も何度も守れなくてごめん、と言いながら涙ひとつ流さないカカシを見ると、気づけば抱きしめていた。そして震えるカカシの背を優しく叩き、泣いてもいいんだよ、と言っていた。

相当我慢してたんだろうカカシは私がそう言った直後、堰を切ったように声を張り上げて泣いた。
泣けるなら泣けばいいと思った。カカシがひとりで抱え込む必要はないとそう思った。カカシたちが独りじゃないと私に教えてくれたように、カカシも独りじゃないって、私がいることをわかってほしかった。


「…その三人がいなかったらきっと…ううん、絶対に今の私はいない。あの三人に孤独から救ってもらったから今の私がいるんだ」
「…」
「サスケ」


私が名前を呼ぶと、俯いていたサスケはゆっくりと顔を上げた。その顔が、とても辛そうでそしてどこか儚くて、気づけばカカシの時と同じようにぎゅっと抱きしめていた。


「!」
「あんたならわかってるでしょ。自分が独りじゃないこと、支えてくれる仲間がいること」
「…」
「人ってさ、失ってからその大切さに気づくんだよ。でもそれじゃ遅い。失う前にその存在の大切さに気づけたときに、初めて人として強くなれるんだよ」
「…っ」
「サスケ。復讐を考えたことがある私から忠告。…復讐心は、やっと気づいた大切なものも壊すことになるよ」
「!」
「気付くよ、きっと。そうすればあんたは今なんて目じゃないくらいに強くなれる。なんたってあんたはあのうちは一族なんだもん。自信持ちな」


体を離して頭をポンポンと叩いてその場を後にする。
後ろで聞こえた小さな「ありがとう」という言葉に、「ちびっこは早く帰んな」って格好つけながら去っていく私がいた。



非力な私にさようなら




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