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「ったく、なんであんたが飲み過ぎてんのよ」
「だってぇ〜、楽しかったんだもん」
「…あのねぇ。三十間近のおっさんの“だもん”なんてマジで気持ち悪いからやめれ」


なんで私がこの男を介抱してるの、ってか本来されるの私じゃない?なんて酔っ払って歩けないカカシを支えながらため息をつく。

あの後、紅やアスマにしこたま飲まされたカカシは会の終わりを待たずに潰れた。
それもそのはず。机に突っ伏すカカシに周りには飲み終わった一升瓶がゴロゴロ転がってたもんな。もともとそこまで強くないくせに。


「ほら、ちゃんと歩け」
「んふふ〜」


人の話も聞かずになに笑ってんだちくしょう。
こっちは慣れない飲み会で疲れてるっていうのに。呑気なもんだ。


「ユウナちゃ〜ん」
「なに」
「俺、あそこよりた〜い」


ふらふらな足取りで支えていた私の腕を離して目の前の公園に入っていった酔っ払い。
三月も終わりとはいえ夜はやっぱりまだ冷える。だから早く帰ってあったかい布団に入りたいのに。ここまで酔っ払った人を放って帰るなど私の良心が許すわけもなく、ため息をついてその後を追う。


「ユウナちゃ〜ん、ここ座って〜」


公園にあるベンチに腰掛けたカカシが自分の横をバンバンと叩く。
つかさっきからのその甘ったるい呼び方はなんだよとまた出るため息を抑えながら言う通りにする。私が座った途端にもたれかかってきたカカシ。いや、重いし。


「ユウナ〜」
「はいはい」
「ユウナ〜」
「なに」


ただただ私の名前を呼ぶだけのこの時間。無駄、マジで。でもなんでか知んないけど本人はすこぶる嬉しそうで。


「ねぇねぇ」
「だからなに!」
「俺さぁ、ユウナのこと好きなんだぁ〜」
「!!」


…え、今この酔っ払いなんて言った?え?


「ずっとず〜っと昔から好きなんだぁ。ユウナが里を出る前からずっとねぇ」
「…」
「知ってたぁ?」


なにがおかしいのかでれでれ笑うカカシに呆然とする私。生憎まだ事態が飲み込めない。聞き間違いじゃなかった…。カカシが、私を好き?本当に?

正直、カカシをそういう対象として見たことがない。
私の中のカカシは常に“仲間”で“友達”で、性別の枠を飛び越えた存在。だから好きとか嫌いとかそういう次元じゃなくて、なくてはならない空気みたいな存在。カカシたちミナト班がいたから今の私がいる。それは絶対変わらないし変えようとも思わない。

だけど、こと恋愛となると話は別だ。
生憎私はそういう感情にものすごく疎いらしい。現にカカシが長年想いを寄せてくれていたことに気づきもしなかった。

カカシは私の中でとても大切な存在。私を変えてくれたかけがえのない存在。だけどそれはイコール好き、ということになるんだろうか。いやまぁ好きかと聞かれれば好きだけど。それは恋愛の好きなのか人としての好きなのかと聞かれればはっきりとは答えられないわけで。

でも、カカシがはっきり好きだと言葉にしてくれた。だから私も答えなきゃ。わからないはわからないなりに、真っ直ぐ。自分の言葉で。

そう決意してふーっと息を吐き声を絞り出す。


「…カカシ」
「…」
「…えっと、その…あり、がとう」
「…」
「…だけど、正直、カカシをそういう目で見たことないんだ」
「…」
「あ、だからって嫌いってわけじゃないよ!ちゃんと好きだよ!」
「…」
「…だけど、それが恋愛としての好きなのか、って聞かれたら、はっきりとはわかんないんだ」


「ごめん」
そう言ってみて、初めてカカシの様子がおかしいことに気づいた。そーっと右肩に寄りかかったカカシの顔を覗き込む。


「…マジかよ」


スースーと気持ちよさそうに寝息を立てて眠る隣の酔っ払い。
まぁ、酔っ払いだから仕方ないか。ずいぶん飲んでたしね。なんか一気に力抜けた。この男ときたら言うだけ言って自分は満足して寝ちゃうんだもん。たまんないよ。


「…でも、ありがとう。嬉しかったよ」


熟睡に入るカカシをよいしょと背に担いで、半ば引きずるように公園を後にする。
肩に乗ったカカシからときどき聞こえる幸せそうな笑い声に私の頬も緩んだ。



酒はのんでものまれるな




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