「サクラ!!」
「!シカマル」


木ノ葉病院に着くとすぐにサクラがいたため大声で叫んだ。「病院では静かに…」そう言いながら俺の腕にいるマリナに気づいたサクラは徐々に状況が飲み込めたらしい。


「抜け忍の集団に出くわした。クナイに毒が塗ってあったらしくてもう意識がねぇ。頼むサクラ、マリナを助けてくれ!」
「…わかった、すぐに運んで!」


サクラとマリナは医療班と一緒に処置室に入っていく。俺はその前で立ち尽くしていた。

何が上忍だ。後輩の1人も守れないでアスマに託されたもんなんて守れるわけがねぇだろ。そう思いながら不甲斐なさと悔しさとがごちゃ混ぜになって近くの壁を殴った。そのままずるずるとベンチに腰を下ろす。

完全なる慢心。頭を抱えた。
マリナに何かあったらどうしたらいいんだ。マリナが、助からねぇなんてことになったら…。

自責の念に駆られる俺の耳に「シカマル!!」なんていのの声が聞こえてよ。気づけばいのに胸ぐらを掴まれてて。「いの、落ち着いて」と止めてるチョウジもいた。


「…あんたがいながらなにやってんのよ」
「…」
「なんでマリナが意識不明で帰ってくるのよ。ねぇ!」
「いの、落ち着いてよ」
「落ち着けるわけないでしょ!私の妹みたいなマリナが死ぬかもしれないのよ!」
「……悪ィ」


唇を噛み締め涙を流すいのに今の俺が言い返す権利も、そんな余裕もなかった。
いのの言う通りだ。上忍である俺がいながらあいつをこんな目に合わせちまった。情けなくて言葉もでねぇ。謝って済むもんでもねぇ。俺がもっと強ければ。俺がもっと気を張ってれば。俺がもっと。


「シカマルが一番悔やんでるんだから。今はマリナを信じて待ってようよ、ね?」
「…えぇ」


俺の服から手を離したいのは、チョウジに支えられながら俺の隣に腰掛けた。時折鼻を啜る音がする。そんな中で、あいつと出会った日のことが走馬灯のように蘇ってきた。







「初めまして、マリナです!よろしくお願いします!」


いのに紹介されてそう笑ったマリナの額には真新しい額当てが光っててよ。若いねぇなんておっさんくさいことを思った俺らはもう中忍だった。その頃はアスマを亡くしてまだ日は浅く、沈んだままだった俺の心にこいつの笑顔は眩しかった。
なんの穢れもねぇ、未来を信じてきらきらしてる瞳。ちんちくりんでも、それを感じさせないほど未来に満ち溢れてるようなそんな第一印象だった。


「シカマル先輩!」
「うおっ」


それからマリナは、会うたびに俺の背に飛びつくようになった。
最初はビビった。が、だんだん慣れて来るにつれて避けようと思う俺もいんだが、避けられるのに「めんどくせぇ」なんて言いながら甘んじて受けている俺がいた。

嫌ではなかった、最初から。普段の俺なら絶対避けているはずだ。だが、それをしなかった。それは“嫌ではない"としか言えねぇ。


「…いつか、追いつくからね」
「!」


そう小さい声で呟いたマリナの声が俺の頭ん中に響いた。







『大好きでした』


そう笑って目を閉じたマリナを思い出し唇を噛んだ。

いつからだ?あいつはいつから俺を?
そんなことを考えても意味はねぇ。あいつはきっと、自分の最期を悟って俺に言った。いつか追いつくとそう言ったあいつと繋がる。

バカ。
まだ追いついてねぇだろ。
話してぇことがあんだ。
だからーー。


「…マリナ、!」


そう祈り目を閉じた瞬間、処置室の扉が開く音がして跳ねるように立ち上がった。いの、チョウジと駆け寄ると神妙な面持ちのサクラがいてよ。


「サクラ、マリナは!?」
「解毒は成功した。跡は残るかもしれないけど、傷の処置もしたわ、大丈夫よ。あとは目覚めるのを待つだけね」
「よかったぁ…」


そう言って崩れ落ちたいのをチョウジが支えた。


「シカマル」
「…おう」
「あと少し遅かったら間に合わなかったかもしれない。マリナを助けてくれて、ありがとう」
「…ッ」


そう言って笑ったサクラに背を向けた俺の頬を、温かいものが伝った。





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