「…ったく、めんどくせぇ」
マリナとの任務の帰り。ただの密書運搬のBランク任務だっつーのに帰りに抜け忍集団と遭遇。人数こそ6人だが全員が上忍クラス。引き剥がされたマリナんとこに2人行っちまったから早いことフォローに行きてぇが、なかなか行かせてくれねぇ敵さんに小さく舌打ちした。
「…影縛りの術!」
少しの隙をついて影を伸ばせば相手らも抵抗してもがいている。ちくしょう、大人しくしろっつーんだよ。そう思いながら影を徐々に伸ばしていくとマリナのチャクラを感じた。額に汗が滲むのを感じながら隣にマリナが降り立ったのと同時に影で首を絞め敵さんは倒れた。
額の汗を拭いながら目をやると、小さな切り傷はあるものの元気そうなマリナに安堵した。
「早かったじゃねぇか」
「ご覧の通り手こずりましたけどね」
「そりゃ、このレベルの忍だ。中忍のお前じゃ手こずらねぇ方が無理な話だな」
俺がそう言うと明らかに凹んじまったマリナの頭に「…だが、」と言いながらポンと手を置く。
「…よく頑張った。お前、強くなったな」
「!」
そう言って恥ずかしくなって頬を掻くと、驚いたように目を見開いたマリナは照れ臭そうに笑った。
さて、木ノ葉に回収の式でも飛ばすかと考えてたらマリナが俺の腕をサッと引く。何が起こったのか一瞬わからなかったが、視界に入ったマリナの背中に刺さったクナイに目を見開いた。
「風遁・真空玉!!」
マリナが痛みに顔を引き攣らせながら振り返って術を放つ先には取りこぼした敵忍がいて。その瞬間、マリナに庇われたのだと気づいた。敵忍が風遁に当てられぶっ飛んだと同時に崩れたマリナの体を支える。
「…先輩、」
「バカ!なんで庇った!」
「…はは、わかりません…。身体が勝手に動いちゃって…」
自責の念に駆られながら、辛そうに笑うマリナに胸が締め付けられた。
油断した。不覚だった。思い当たる言葉はどれも言い訳だ。毒つきクナイだったのか徐々にマリナの瞼が重そうに閉じようとしている。
「…やっと、ちょっとは追い付けたかな」
「!」
「…なら、伝えてもいいですよね…」
まるで自身の最後を悟ったかのようなマリナの言葉に耳を塞ぎたくなる俺がいた。
「おいもう喋ん…」
「先輩」
「!」
「大好きでした」
笑顔でそう言ったマリナに目を見開くと同時にマリナの腕がだらんと下がっていく。何度も何度も名前を呼ぶが意識がない。
「…やべぇなこれ」
すぐに里に戻らねぇと。マリナの命が危ねぇ。
考えるより先に動いた身体。マリナを抱えると俺は今までにないくらいのスピードで里を目指した。