「とと、すっかり寝てるねえ」
「ん」


父親に似てのんびり屋さんの息子を抱っこしながら、自分の腕を枕にして寝てるシカマルに笑った。

アカデミーの同期の私たちは三年前に結婚して、その翌年にこの子が産まれた。
立ち会ってくれたシカマルはこの子を抱いたら感極まって泣いちゃって、何度もありがとうなんて言うから私までつられて泣いちゃったんだ。

六代目火影であるカカシ先生の補佐役として、毎日朝早くから夜遅くまで仕事に明け暮れるシカマル。“ナルトが火影になった時に、俺があいつを支えてやんねえとよ”って誇らしそうに言ってたっけ。とはいえ疲れというものは絶対来るわけで。この子を寝かしつけてる間に一緒に寝ちゃったみたいなんだけど、この子はすぐ起きちゃって洗い物をしてた私に向かってとてとてと歩いてきたわけだ。


「ととはお仕事で疲れてるから、寝かせてあげようね」
「ん」


今日は珍しく早く帰ってこられたんだけど、今日が何の日なのかきっと忘れちゃってるんだろうなあ。きっと、それもわかってるカカシさんが気を遣ってくれたんだろう。
この子もまだ“かか”とか“とと”とか二語文しか喋れないし、一緒に外食に行くと疲れるからもともと家でご飯にしようとは思ってたんだけど。さりげなくシカマルの好きなサバ味噌を出してみても「おっ、やったぜ」ってちょっと喜んで食べてただけ。

なんで今日のこの日に私がサバ味噌を作ったのか、シカマルはきっとわかってないんだろうなあ。


「かぁか」
「ん?」
「とと、おっき、おっき」
「え?」


下ろせ、とでも言わんばかりに腕の中でもがく息子を下ろせば、とてとてとシカマルに近づいて、横向きに寝てるそのお腹によじ登ってぺしぺしと頭を叩き始めた。


「こら!とと起きちゃうよ!」
「とと、おっき!おっき!」


私が小声で怒っても手を止めない息子の姿を見て、やっとわかった。


「…かかもやっちゃおっかな〜」
「かぁか?」


そっとシカマルのお腹のあたりに膝をついて、きょとんと私を見る息子を肩に移動させて、空いたわき腹を思いっきりくすぐってやった。



「!?っお、いやめろって…ひひっ……なにや、ってんだよ…!」
「狸寝入りしてるシカマルが悪いんだよ〜」
「とと、おっき!おっき、した!」
「ふひっ…っチハルやめろっ、て……はひっ」


飛び起きて涙目になってるシカマルにきゃっきゃと喜ぶ息子。
こういういたずらっぽいところは私に似たのかもしんないなあ。


「わ、るかったって…ひっおい…やめてくれって……はははっ」
「…ふぅー。仕方ない、この辺で勘弁してあげる」
「…お前らなあ…」
「ふぅー」


私の真似っこをしてふぅーと同じように額の汗を拭うふりをした息子に、シカマルと顔を見合わせて笑った。


「シカマル」
「んぁ?」
「お誕生日、おめでとう」
「!」
「とと、おめっと!」
「うおっ」


おめでとうと一緒に、息子がシカマルに飛びついた。
驚いたような顔をしてそれを受けたらだんだん照れたように笑って、今度は私を手招きする。なんだ?と思いながらそばに行くと、シカマルは息子と一緒に、私まるごとぎゅっと抱きしめた。


「?」
「…ありがとな。すっげーうれしい」
「…ん」
「とと、しゅき!」
「ふはっ、ととも好きだぜェ」




うまれてきてくれて、ありがとう。
fin.


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