Chapter.14 1/7



早足で歩くユーリスについて行くと、島の裏側に船の残骸があった。もう随分長い間ここにあるのか、ひどく風化している。

船底近くの割れ目から中に入ると、すぐの部屋は牢屋のようなものなのか、行き止まりになっていた。


「潜れそうだな。ちょっと先を見てくる。」


エルザがそう言って、浸水した床下へと続く穴へと向かうが、それより先にユーリスが何も言わずに潜っていってしまった。
本当にどうしたんだろ…この船のこと何か知ってるのかな…。

しかしとりあえずのところ、ここへ来て潜水しなければならないことの方が、私には問題だった。
潜るのは苦手なのだ。


「あぁー、待ってエルザー!」


声を掛けるも、彼はすでにユーリスを追って潜ってしまった後だった。
うぅ…。
意を決して水へと入る。
天井まではギリギリ浸水していないようで、少しの隙間がある。良かった…。
天井づたいに、光が漏れる場所まで行くと、先に上がっていたエルザが手を貸してくれた。


「ありがとう。でも先に行っちゃうなんて酷い…私水中で目を開けてられないのに…。」

「え?そうだったの?言ってくれれば良かったのに。」

「さっさと行っちゃったのは誰よ…。」


水を吸った服の裾を絞りながら、エルザを軽く睨みつけると、彼は慌てて「ごめん!」と謝ってくれた。
エルザは素直だなぁ…。





船の奥へと進んでも、やっぱり船はボロボロだった。
足場は割れ、浸水した水が床下を覆っている。
ただ、荷物だけは整然と並んだままの状態で朽ちていた。
それはこの船がゆっくりと漂ってここまで来たことを静かに物語っている。




「(ん…?)」


今何か音がしたような…と、思った瞬間。先を歩いていたエルザの目の前で、水の中からヤシガニが飛び出してきた。
後ろからも、黒いマダラヤシガニが現れる。
ここはあいつらの巣だったのか!



不意を突かれたが、すぐに戦闘態勢に入る。
足場が覚束ないせいで戦いにくい…。


「……っ!?」

「ユーリス!」


足元に気を取られた一瞬、魔法の詠唱中だったユーリスが攻撃されてしまった。
すぐに体勢を変え、後ろを向いたままの敵に切りかかる。
ひっくり返ったところをエルザが上から剣で突き刺すと、そのままヤシガニは息絶えた。

あと1匹…。
と、敵に向きなおった途端、頭上を通過していった火球によって、もう1匹のヤシガニは燃やされていた。




「ほら、やっぱりついてきてよかった。」

「別に僕がついてきてくれって頼んだわけじゃないからな!」


相変わらず不機嫌だ。不機嫌というか、何か焦っているような…。
顔を覗くと、鋭く睨まれて足早に奥へと歩いて行ってしまった。


あれ?なんだか顔色が悪い…?




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