Chapter.02 1/3
「子供がまだ残ってる!」
誰かがそう叫ぶ声を聞きながら、街道の奥へと走る。
街道と森との境の開けた場所に、白い虎が1匹。青白い光を放っていることから、ただの獣ではない。魔物だ。
「なんだありゃ!?」
「まずいよ!子供達が逃げ遅れてる!」
崩れた柱の影に、子供達が蹲っていた。
あんなところにいたら、あの魔物に襲われてしまう。
「エルザ、さっきの光で敵を引き付けろ。その間に、ユーリスは子供達を頼む。」
「わかったよ!」
エルザとユーリスが走りだし、残った私達もエルザの後を追い魔物を囲う。
魔物はエルザの力に注目し、彼に襲い掛かる。
私はエルザへの攻撃を邪魔するように魔物を切りつけた。
「(……?)」
妙な感じがした。
魔物はエルザを攻撃しつづけている。
けれど、私が切りかかった一瞬…あの魔物はこちらを見た…?
「君で最後だ、皆が待ってるよ。行こう。」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん。」
「あいつ、子供相手だと別人だな。」
「聞こえてるよ、セイレン。」
いつの間にか子供達は全員逃げられたようだ。
あの無愛想な少年は、意外と優しいのかもしれない。
「よし、子供は逃がしたな。ユーリス!」
「あぁ、僕の魔法に任せてくれ!」
ユーリスの魔法が当たり、魔物が少し怯んだところを一気に叩く。
しばらくそれを繰り返していると、さすがに魔物の動きが鈍くなってきた。
と、急に魔物が距離を取った。
エルザの右手からはまだ光が溢れている。
・・・やっぱり。
あの魔物は、ただの魔物じゃない。あの力に注目しない。ちゃんと周りを見ている。
そんな思考を巡らせた一瞬、魔物が私に飛び掛ってきた。
「・・・・・・っ!!」
「エマ!!」
体の中心をずらし攻撃を避けるが、さすがに避けきれず地面に叩きつけられた。
二撃目が来る前になんとか太刀を振るい、魔物を払いのける。
「大丈夫か!?」
「…な、なんとか…。」
クォークの手を借りて起き上がる。
魔物は少し離れた崖の上で、こちらを探るように見ていたが、そのままどこかへ去ってしまった。
「魔物じゃ、ないのか…?」
エルザがそうつぶやく声が聞こえた。