「5月14日?」

「姐さん、ご存じじゃなかったですか?その日は親父の誕生日なんですよ。」

「誕生日…。」

「毎年組でお祝いするんですが、今年は姐さんとの初めての誕生日なのでその日は1日親父の予定は空けておきます。」

「はぁ…。」

運転しながら楽しそうに話している西田さん。私はというと困惑の表情を浮かべ苦笑いをするだけ。だってそれもそうだろう。私達の関係は夫婦(仮)、夫婦(笑)のようなものだからだ。しかし、周りの人はそうは思っていない。夫婦として仲良く宜しくやっていると思っているのだろう。

お祝いした方がいいのだろうか?

悩んでいる内に自宅へ車は到着する。西田さんは当日いい日になるといいですねと声を掛けてくれたが、私はまだ答えは出ていない。そもそも真島さんがお祝いされるのを喜ぶ人なのかもわからないし、プレゼントは何が欲しいのかわからない。

そう、何ひとつ知っていることがないのだ。

まぁ、当日ケーキでも買っておけばいいかなと数日前はそんな風に思っていた。しかし、周りはそんな風に簡単に済ませる訳ではないというのが実情だ。

「なんですか!この箱の山は!」

「毎年のことや。他の組のもんやら組の人間やらお祝いが送られてくるんや。」

「あぁ…。」

5月14日が近づくにつれて部屋にはお祝いの花やら贈り物でいっぱいになるリビング。真島さんは差して驚きもせず、こんないっぱいもろても困るんやけどなぁと軽い感じで送られてきた荷物を見ている。

やっぱり、ちゃんとお祝いした方がいいのかも…。

そう思いながらも何をしたらいいのか皆目見当もつかない。当たり前だ。私は真島さんのことに関して知らなすぎるのだから。

「何か欲しいものとかあるの?」

だからこそ聞いてしまうのが一番だと思った。買ってからこれ要らないものだったり、趣味に合わないものだったら困るだろう。ちょうど、誕生日の話の流れになっていたしこれ幸いと思い聞いてみた。

「欲しいもんかぁ。欲しいもんがあったら買うてるからなぁ。」

「やっぱり…。」

何となくそんな気はしていた。真島さんの性格を考えると欲しいものは自分で手に入れそうな気がしていたからだ。じゃあ、当日はケーキくらい買ってくればいいかなとようやく答えがでた所で真島さんはせや!と手を叩いている。

「時間が欲しいのぅ…。」

「時間?」

「まぁ、当日まで楽しみにしときや。」

「えっ…。」

普通逆じゃないのかと思いながらも、真島さんは謎の言葉だけ残して仕事に行くと言って出かけて行った。

そして迎えた5月14日。
特に準備をすることなく当日を迎えた。気が向けば私の好きなケーキ屋さんに行けばいいかとそんな風に思っていたが、朝早くから真島さんは私の部屋のドアをドンドン叩いている。

「椿、早よ起きるんかい!」

「…真島さん。」

眠い目を擦りながらドアを開けると元気な姿な真島さんが立っている。こんな朝早くから今日は何をする気なんだろうと思っていると、早よ着替えてこんかいと言っている。

「で、こんな朝早くから何するんですか?」

「言うたやろ。時間が欲しいって。」

「あぁ…。確かに。」

「今日は、椿の時間をワシにくれや。」

「はぁ?」

寝起きの頭では理解できないこと私と対照的に真島さんの顔はとてもキラキラしていた。




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