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  Fake It編


「ほんま堪忍や。ちょっと目離した隙にこうなっとったんや。」

「いえいえ。送ってもらってすみません。ありがとうございました。冴島さん。」

今日は久しぶりに兄弟と飲むんやと言って出かけて行った吾朗さん。きっと楽しい会になったのだろう。抱えられるように帰ってきた旦那様は今夢の中だろう。

「ちょっと重いけどええか?」

「大丈夫です。」

玄関の前で抱えられた吾朗さんを受け取り、玄関の前に座らせる。まだ起きる気配はなさそう。そんな様子を見て帰ろうとする冴島さんに声を。

「今度はウチでゆっくりご飯食べに来てくださいね。」

「そうさせてもらう。」

背中越しに手を振っている冴島さんを見送り、再び玄関に。吾朗さんに風邪引きますよと声を掛けるが、うーんと唸ったまま。

仕方ない。

一息吐いて吾朗さんの腕を自分の肩で支える。わかっていたけれど、けっこう重い。見た目は華奢に見えるが、鍛え上げられている身体のお蔭で見た目よりも重い吾朗さん。ベッドまではあと少し。自分にそう言い聞かせてベッドにゆっくりと降ろす。

今日はこのままでいいかな。

服を脱がせた方がいいのかもしれないが、運ぶ作業が想像以上に重労働になってしまった為、もういいかという気持ちに。

さて、私も寝ようかな。

心地よく眠っている吾朗さんを見て自分も眠気を感じてきた。明日は朝起きたら二日酔いの吾朗さんの介抱もあることだしと思いながらベッドに入ろうとすると名前を呼ばれた。

「どうしました?」

「帰って…きとったんか?」

「そうですよ。」

目がトロンとしていて微妙に舌が回っていない。本当にこんな風に酔う姿を見るのも珍しい。お水を持ってこようと思うと腕を掴まれた。

「気持ちええのぅ…。」

私の肩に頭を乗せて甘えるようにしている吾朗さん。自然と私の手は吾朗さんの後頭部に。とんとんとあやすようにすると、抱きしめている力が強くなる。呆れながらも私の口元には笑みが。

子供みたい。

そう思いながらもいつもと違う旦那様の姿を垣間見てまた好きな気持ちが増えた。







「エライ飲み過ぎてもうた…。」

「はい。じゃあ、これ飲んで今日はゆっくりしてください。」

「そうさせてもらう。」

朝起きると顔色の悪い旦那様。やっぱり二日酔いになっている。いつもより大人しい吾朗さんを見て呆れながらも笑みが。きっと昨日の夜のことは覚えていないだろう。ちょっと可愛い旦那様の姿をみられたのは自分だけ。ちょっとだけ優越感に浸れた朝。


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