ボスと私編
年が明けて最初に見る夢を初夢。
今宵、眠る時に見る夢とは?
パタパタと騒々しい足音が耳に聞こえる。すると、すぐに私の服の裾を引っ張る何か。目を開けるとそこには愛らしい子供が。
「ママ!お腹空いた!」
ママ!!
てっきり自分の弟や妹達かと思いきやまさかの言葉に耳を疑う。すると更に増える足音。
「ねぇ、ママ、これ壊れちゃったんだけど。」
「ママ、見て!これよく描けたよ!」
「ママー!遊んで!」
え、え、え、えぇ!!
私の目の前には総勢4人の子供達が周りを囲んでいる。うん、これは夢だな。それにしても新年早々見る夢が子だくさんの母親になっている夢とは。
「ほら、ママが困ってるよ。ご飯できたからみんなで食べよ。」
ん?その声は!!
驚いて固まっている私とにっこり笑っているボス。子供達は一目散にテーブルの前に走っている。ママが私ということはパパは…。
「椿、具合でも悪いの?」
「いや、そういう訳じゃ…。」
パパではなくボスは私にそっと近付き私のおでこに手を当てて熱はなさそうだねぇと言っている。私はただその一連の行動に驚いて目を見開くだけ。
「今日はいつもと違って変だね。もしかして昨日の夜のことでも思い出してた?」
「昨日の夜?」
ボスはニヤリと笑みを浮かべて私の耳元で囁くように言うのだ。昨日の椿はとても情熱的だったと。その言葉だけで全てを察してまた固まる。頬に熱を帯びてくるのを感じ始める。本当に熱でも出てきそうなくらいに身体が熱い。
「今日もゆっくり続きをしてあげるから今はこれで我慢ね。」
耳たぶにそっと口づけを落としてボスは子供達の許に。すぐにテーブルは賑やかな状態に。私はただその様子をぼんやりと眺める。幸せそうにしているボスの顔が妙に印象的だった。
「おーい!」
「ボ、ボス!!」
どうやら椅子に腰かけたまま眠りについていたようだ。ボスの顔が間近にあって思わず後ろに下がっているとボスは嬉しそうに笑っている。さっきの夢と同じように。
「いい夢でも見てたの?すっごく幸せそうな顔してたよ。」
「いや、どうなんですかねぇ…。」
ハハハと誤魔化すように笑うとボスは俺も今日はいい夢みたんだよねと話している。会話の流れでどんな夢だったんですかと私はいつもの癖で聞いてしまう。
「自分に子供ができて、俺さぁ、4人の父親になってて、奥さんがさぁ…。」
「あ、大丈夫です。続きは言わなくても。」
「何で?」
「十分良い夢なのが伝わってきたので。」
「ふぅん。まぁ、いいけど。」
まさかボスが私と同じ夢を見ていたとは…。所詮夢は夢。そう自分に言い聞かせて。しかし、夢の中でみたボスはとても幸せそうだったのが妙に引っ掛かっていた。今とは違う優しい笑顔で優しい世界に包まれていた。未来はまだどうなるかは誰にもわからない。けれど、ボスには幸せになってほしいな。そんな事を思いながら前を歩くボスについていく。
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