ボスと私編
「ん〜?」
「どうしたんですか、ボス?」
「ちょっと悩んでるんだよね。」
「はぁ…。」
ボスの手元にはファッション雑誌が並んでいる。てっきり男性ものかと思いきや女性用の雑誌が並んでいてどれも可愛いモデルさんが表紙になっている。
「椿はどの水着がいいと思う?」
「プレゼントですか?」
「そうなんだよね。贈って一緒にプール行こうって誘おうかなって。」
「そうなんですか。私で参考になればいいですけど。」
ボスはお目当ての水着を何個か指し示している。水着を贈るってなかなかハードルが高いような気がするけれど、ボスの彼女さんになる人なのかな。真剣に考えなくてはと気合を入れて贈る相手の情報を頂くことに。
「そうだねぇ。年齢よりも見た目は幼い感じかな。子供っぽい所もあるけど、そこがまた可愛いんだよね。」
「じゃあ、可愛らしい感じのものがいいですね。」
ボスに言われたことをメモしていく。そしてその後もいくつか質問してそのメモを見返して妙に焦る気持ちになる。これって…。いや、違うよね。
「あの、贈られる相手の方ってボスの彼女さんですよね?」
「あれぇ?それ、聞いちゃう?」
「ハハハ…。」
もはや笑うしか術がなかった。そんな私と違いボスは私をまっすぐ見つめている。そう、笑っていない。真剣な眼差しだ。これは最終手段。
「あっ、そういえば、買い忘れたものがあったようなので、そろそろ…。」
「さっき買い出し行ってきたばかりだよね?」
「うっ…。」
「椿、早く好きなの選びなよ。」
「………。」
頬が熱くなるのを感じる。だって、そのメモには私のことを褒めちぎるようなことしか書いていなかった。いつも一生懸命働いてくれているやらふとした時にみせる優しさがいいとか。あぁ、なんてことだ。今回もボスにしてやられた。
「ろ、露出が少なめなこれがいいかな。」
「了解!じゃあ、これで椿とプール一緒に行けるね。」
「うっ…。」
後日ボスとこっそり2人でプールに行ったのは言うまでもない。ボスは私の水着をみてとても嬉しそうにしていたのでそれだけが唯一の救いだ。
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