不安だと言われれば常に不安だ。そうは言っても他の人だってそれはいえること。要は確率論。私の旦那様は人よりも危険な場所に身を置いている。それが他の人とは違うこと。
季節がひとつ変わる度に私の気持ちはまたほっとして次の季節がきたことでまたこの人の隣で妻としていられることに喜びを感じている。

ささやかな幸せ。

さて、長い雨の時期が終わり、毎日うだるような暑さ。お盆の休みもそこそこに納期が遅れていると毎日忙しなく現場にでている真島さん。炎天下の下で毎日大変だろうとそんな事をここ数日は考えていた。

何か、夏らしいこと。

去年はちょうど真島さんと2人で花火を見たなぁ。あれから1年か。そんな事を思いながら何かしたいけれどいい案が浮かばない。遅れてとった夏休みもあと少し。この涼しい部屋で一人過ごすのにも飽きてきた。何か、街に出て探してみよう。2人で夏を感じられるものを。

日傘を差して素足にサンダルで街を歩くとやっぱり夏だなぁと思う。こんな風に街を一緒に歩いてもそれはそれでいいのだが、真島さんはどちらかというと家の中で過ごす方が好きなようだ。家で楽しめる、夏か。そして足が止まって目の前のお馴染みの黄色い看板を前にして中に入る。
夏はもう終わりに近いのかお店の中はこれからの時期に必要なものと夏の商品で混在している。さて、何か良いものがあればいいが。

あ、これいいかも。缶ビールをセットしてできるビールサーバー。とりあえずビールの真島さんにはいいかも。何種類か見て回り、良さそうな大きさのものをカゴに。うん、絶対喜んでもらえそうかも。さて、じゃあ、家に帰ろうかとレジへと向かう途中で足が止まる。

ふわふわと書かれたパッケージ。

いや、絶対今しか使わないでしょ。手入れとか大変じゃないの。そもそも真島さん、使わないよね。とその箱の前で一人悶々として悩む。

「あ、これ欲しかったやつじゃん。」

「いらないだろ。どうせ最初だけだろ。使うの。」

「お酒とかにも使えるし、お酒を凍らせてもおいしいんだよ。」

「へぇ。じゃあ、買うか。」

仲良さそうなカップルがお買い上げ!
うん、買おう。悩んでいた気持ちが飛ぶ。そう、折角の夏だもん。どうやら夏は思考が鈍り財布の紐も緩くなるようだ。
帰って荷物を置いていると携帯が振動しているのに気づく。こんな時間に誰だろうと思ってでてみると真島さんだった。

「椿、明日休みになったから今日は夜どっかに飯でも行くか?」

「そうなんですか。…でも今日は家でいいですよ。」

「何か用意しとんのか?」

「秘密です。帰ってきてからのお楽しみです。」

そう話すと真島さんはお前ら早よさっさと運ばんかいと耳元に聞こえる声。困った西田さんの顔が目に浮かぶ。言わない方が良かったのかもしれない。電話が切れてさっそく準備をしようと思う。ビールに枝豆は必要だし、そうだ、グリルで焼きとうもろこしもいいなぁ。色々と考えているとまた一つ考えが浮かぶ。

やっぱり、買いに行こう。

下準備だけ済ませて再び外へ。ウキウキしながら街を歩く。やっぱり私も真島さんと似ていてお祭りが好きなのかもしれない。そんな事を思いながら目的の物を買いに。


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