変わらず峯くんからはメールが1日1通。
簡単なものだけどそれをみて私は返す。
何を送ろうか、何があっただろう、何を伝えよう。
1日の最後はメールの内容を考えることで終わりを迎える。

「未来、今日やっと終わりそうだ。終わったら家に帰る。」

「ほんとに?」

その言われた言葉を何度も反芻しながら飲み込んでそれは嬉しさになる。
電話が切れたあともそのままの状態で私はにやけてしまう。

峯くんが帰ってくる。
今日は久し振りに峯くんがおいしいと言っていたご飯にしよう。そう、それならば準備しないと。そんな事を考えながら帰ってくるまでに何をしておこうかと考えていく。

買い出しを終えて帰ろうとしていると、肌に触れる水滴。
雨…。
今日はそんな予報もなく、さっきまで晴れていたのに。
変な天気。
そう思いながら駆け足で家まで急ぐ。

濡れた服を拭きながら外で鳴っている雷の音。
ゴロゴロと音を立てて遠くの方で落ちたような音。

そして朝まで晴れやかだった気持ちに影がかかる。
ざわざわと現れた不安な気持ちを表すような外の景色。

峯くん…。そっと触れた左手を見ながら大丈夫だと言い聞かせる。
そして鳴らない電話。

そうだ、食事の準備しないと。
何かに集中すればきっと不安な気持ちは収まるはず。
ただ落ち着けばいい。
そんな気持ちでキッチンに向かう。

ひとつひとつ出来上がったおかずを見て、ほっとする一方着信のない電話が気にかかる。
先ほどまでの雨は通り雨だったようで今は止んですでに夜の空に。

峯くん、まだかな。

そんな事を考えていると突然鳴り出した電話。

「峯くん…?」

「未来…ちょっと間に合うかわからない。」

ちょっと苦しそうな声がして胸騒ぎが止まらない。
絶対、何かあった筈だ。

「うん、大丈夫。待ってる。」

「あぁ…。」

そういって携帯が切れたのかと思いきや、切れたわけではなく複数の声が聞こえる。
音量を上げて注意深く耳に神経を集中させる。

そして聞こえたのは銃声。

なんで、なんで、なんで。

そして聞こえた声。

「峯、止めろ。」

峯くん、何が起きてるの?

そして峯くんの名前を叫ぶ大吾さんの声を聞いて私はずるりとそのまま床に倒れ込む。

峯くん、峯くん、とただ何度もうわ言のように呟きながらただこの繋がっている電話を切る事はできなかった。

だって切ってしまったら全てが終わってしまう。
事実を受け入れてしまう自分がいる。
それだけは絶対に嫌。

外からは静かに雷の音が鳴り始めていた。


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