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温暖な気候の木の葉には珍しく、雪が降った。
里のあちこちに雪だるまが置かれている。
昼間に頬を真っ赤に染めながら、一生懸命に雪を集めていた子どもたちの産物だろう。

そろそろ日が昇るだろうか。
ほんの少し裾を明るく染めてきた空に、白く舞う雪はとても幻想的だ。

慰霊碑の前でそんな空を見上げると、雪は顔に落ちると途端に水に変わる。
唯一露出された右目に雪が入り、涙のように目尻から零れた。

何度訪れても、何年経っても消えない後悔。
変な時間に目が覚めてしまい散歩がてら訪れたが、やはりここに来ると気が締まり、色んなことを考えてしまう。
空が白んできた。
しばらく雪の涙を流し、そろそろ帰ろうと視線を戻す。


−−−綺麗だ。


戻した視線の先に、人がいた。
一瞬目が合うと彼女は目を見開き、瞬きひとつの間に姿を消した。
こんな場所だから幽霊に会ったのかとも思えるが、足はあった。
それに、正確には消えたのではなく、瞬身の術だった。
となると間違いなく忍で、それも恐らく上忍だろう。
だが、記憶を辿っても今見た外見を持つ者が思い当たらない。


朝日に照らされた真っ白な髪、透き通るような白い肌、瑠璃のような深い青色の瞳。


雪と一緒に降ってきたんだろうかと思うほどに白く、儚げな彼女を、ただただ綺麗だと思った。




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