戦いの末、
後悔はしてない。…多分


銀髪の男性…シャルティエさんと剣術で勝負することになった。一応、竹刀木刀の心得はあるから、簡単に負けるようなことはないと思う。


司令室の奥、そして地下に下りると広い鍛練場があった。立てかけられていたのは木刀のようで、ディムロスさんがそれを手渡してくれて、シャルティエさんと向き合う。


「勝負は、どちらかの木刀が手から放れたらだ」


"いいな"と確認され頷くと"用意、"と声がかかる。

木刀を構えてシャルティエさんを見据える。
す、と細められた双眼にぞくりと鳥肌が立った。この人、戦い慣れてる。


「はじめ!」


ディムロスさんの声がかかり、先制しようかと機会を伺うも、攻めにくい間合い、隙のない構えに攻め倦ねていると、一瞬、剣が下がった。


「はぁぁあっ!」
「っ、く」


がん、と木刀の当たる音。びりびりと手に伝わる痺れ。簡単にはいかないとわかっていたけど、こんなに戦いにくいのは初めてで…射ぬくような彼の視線に、一瞬怯んだ。


ガン、


「っ、」


「勝者シャルティエ、」


私の隙を見逃さず、木刀は手から放れ弾かれた。よろけて、ぼすんと床に尻餅をついた。少し、いやかなり悔しい。


「大丈夫、ですか」
「…へ、?」


見上げると、先程とは違い眉を下げたシャルティエさんに手を差し出された。怖ず怖ずとその手に捕まると立ち上がらせてくれて、お尻についた埃を掃う。

「ありがとう、」
「…いえ」


素っ気ないのは変わらないけれど、彼が纏う空気が、少し違った。少しは、認めてくれたのだろうか?


「すごいじゃないケイカ」
「ハロルド」
「シャルティエって剣だけは凄いのよ。ヘタレだけど」

「っ、ハロルド博士!」


顔を赤くしたシャルティエさんが怒鳴る。ハロルドは"むふふ"と口元に手を当てて笑った。


「いいのかしらー、シャルティエ?」
「デ、」
「…で?」

データ採取はやめてくださいいぃい!!!!


もの凄い勢いで鍛練場を出ていったシャルティエさん。ぱちぱちと瞬きすれば、カーレルさんとイクティノスさんがくすりと笑う。


「ハロルド、あまりシャルティエをからかうな」
「だぁって、楽しいんだもの、アイツ」


けたけたと笑うハロルドにディムロスさんが大きな溜息をついた後、リトラーさんを見た。彼は笑みを浮かべて頷いて、"ケイカくん"と私を呼んだ。


「は、はい」
「君の剣の腕は間違いないみたいだね」
「え?」

「…構え、間合い、動き、全て合格。正直、こんなにもできるとは思っていなかった」


リトラーさんに次いでディムロスさんが言う。ほ、褒められてる、の?


「そんな、こと」
「彼、滅多に褒めないのよ。
素直に受け取っていいと思うわ」


綺麗な薄紫色の髪をした女性が、ふわりと暖かい笑みを浮かべて言った。

え、と確か


「アトワイト・エックス
アトワイトでいいわ。敬語もいらない」
「わか、た…アトワイト」
「よろしくね、ケイカ」


これは、認めてもらったと思っていいのだろうか?



戦いの末、



(褒められた、)
(素直に嬉しい、な)



20111024

久々のシャル連載更新です。

この連載も最後はちゃんと決まってて、後に始めるリオン連載の大きな鍵になってます、一応←

リオン連載のヒロインの設定とか最後とか、何年も前から決めてたから、早く連載したい←



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