帰隊、報告。


地上軍基地。
無事帰隊してシャルティエとケイカは作戦室、リトラーに報告を終えたところだった。


「ケイカ!」


ばたばたと足音が聴こえると突然の衝撃。休み休み来たとはいえ、血がまだ足りないケイカは目眩がして尻餅をついた。腰には、ハロルドが抱き着いている。


「ちょっと、顔色悪すぎじゃない!」
「あはは、ちょっとね」
「っ、シャルティエ!」

「ハロルド、シャルティエは悪くない!」
「アンタ、守るって言ってたじゃない、なにしてんのよ!」


シャルティエに罵声を浴びせるハロルドに違うんだって!と止めるも、ハロルドは全く聞く耳を持たず。見兼ねたリトラーがハロルドを止めて、息を荒げているハロルドは不服そうに口を閉じた。


「シャルティエ少佐」
「…はい」
「ケイカくんに、なにがあった?」

「魔物に、右肩を」
「傷は?」
「かなり深いものでしたが、今は塞がっています」

「そうか。

…ケイカくん」


シャルティエは、唇を噛んで俯いた。また、自己嫌悪である。守れなかった、守れなかった。愛しいケイカを、守れなかったんだ、僕は。情けない、腹が立つ。守れなかったのに、想いを告げてしまった。思わず、口付けてしまった。


「―――っ!!!」


ぼん、とシャルティエの顔は真っ赤に染まる。突然のことにハロルドはシャルティエを睨みつけながらも疑問符を浮かべ、ケイカは顔を赤くしたシャルティエを見て、思わず目線が唇にいった。


「――っ!!」


ぼん、と次いでケイカまで顔を真っ赤に染めるものだから、リトラーとハロルドは「あぁ、何か進展したのだな」と納得した。なにがあったか、はここで聞かずハロルドは後でアトワイトと聞き出せばいいか、と散々シャルティエに当たり散らしたことでケイカがいなかったことによるストレスを発散し、じゃ、アタシは研究室篭るわねーと音符を飛ばして司令室から退室した。


「シャルティエ少佐、ケイカ中尉」

「「はい」」

「私は、君達を応援しているよ」

「え、」
「はい!」


上からリトラー、ケイカ、シャルティエである。
シャルティエは、司令であるリトラーに認められたのだと嬉しくなり素晴らしくキラキラした笑顔で応えた。


「それでは、二人共ゆっくり休みたまえ」
「有り難うございます、司令」
「失礼します」


司令室を出ると、ディムロスとカーレルがこちらに向かってきていて、名前を呼べばカーレルは優しげな笑みを浮かべ、ディムロスはホッとしたように息をはいた。


「ただいま、二人共」

「無事でよかったよ、ケイカ、シャルティエ」
「あ、あの、有り難う、ございます」

「シャルティエ」
「はいっ、ディムロス中将」

「ケイカはどうだった?」

「迅速かつ正確な治癒術、戦闘では兵士達への援護のタイミング等、どれも申し分ありませんでした」


そうか、と満足そうに頷いたディムロスとカーレルに、隣で聞いていたケイカは顔を赤くする。ただ精一杯やっていただけなのにこんなに褒められるなんて…!恥ずかしい、逃げ出したい!


「よく無事帰ってきてくれた」
「ちょっとドジったけどね」

「生きて帰ってきたんだ。私はそれだけ充分だ」
「ふふ、ありがとディムロス」

「そのドジで肩を?」
「あはは、うん。けどもう大丈夫だよ?」
「あまり無理はせず、ハロルドかアトワイトに見てもらうんだよ」

「ん、ありがとうカーレル」


にこやかに話す3人を見て、シャルティエはまた嫉妬する。僕も、ケイカと話したい、僕だけに笑いかけてほしい。無理だとわかっていても願ってしまう。


「シャル、行こっか」
「そうですね。
中将、失礼します」

「あぁ、ゆっくり休め」


シャルに握られた手が熱い。


帰隊、報告


(どきどき、する)



20121031




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