「あ、っ、やだ…!」
「や、待っ…!」
「ぁ…っ、フレン…っ」



断言しよう。いかがわしいことなど一切していない。

どうしてこうなったか、時間は少し遡る。




僕の恋人は、少し、というかかなりズレているようだ。


「ねぇフレン、勝負しましょう!」
「…、急にどうしたん「するでしょ?」


言い切る前に被せられた言葉に溜息をつきたくなるも、きっと(いや確実に)機嫌が悪くなるだろう彼女を前に飲み込んだ。

勝負の内容を聞いてみれば、単純明快なカードゲームだった。勝負に勝ったほうは相手に好きなことをしていいという。


「僕にしたいことでもあるのかい?」


勝負しなくても、と続けようと口を開いたと同時に彼女は目を輝かせながら笑う。


「あのね、フレンの鼻に指を突っ込んでみたくって!」
「……は?」


耳を疑う。聞き間違えたか?彼女は、いま、なんて?見目麗しい女性の口から発せられたとは思えないくらい下品な内容であり、信じたくない言葉だった。



「だめ?」
「い、いや…あの」
「ほらぁ、やっぱり嫌がるでしょー?だから勝負で勝ったらやらせてねっ」



内容が内容だけに断りたくなったが、楽しそうに笑う彼女を前に今から首を横に振るなんてできなかった。これも惚れた弱みというやつだろう。いや、勝てばいい話である。それに、自分が勝てば彼女に好きなことをできると考えれば、やる気も出てくる。


「さ、勝負よ!」
















手持ちが少なくなった僕と、倍はあるだろう彼女。こんなにも弱いとは思っていなかった。あんなに自信があるようだったから負けないように、と思っていたのが。


「やだやだ負けちゃう、やだぁ…!」


目に涙を浮かべてオロオロしながら必死にカードを出している彼女を前に、小さく笑う。あぁ、可愛い。そして愛おしい。こんなにも彼女に魅せられている。


「えい、最後ぉ!」
「え?」


彼女が嬉しそうに声を上げて我に返る。彼女の手にカードはなく、勝った勝ったと子供のように喜んでいる。うそだ、あんな少しの時間で負けるなんて。

彼女が出したカードを確認しても不正を働いてはいないようで。ニヤニヤと笑う彼女に口許が引き攣る。名前を呼ぶと「ふふふ」と怖いくらい綺麗な笑み。


「さぁフレン、鼻出して?」
「い、いや…!」
「負けたんだから諦めてちょうだい!」


嫌だ、負けたとはいえ、恋人に指を突っ込まれるなんて羞恥プレイもいいところである。なんとしても避けたい。


「鼻以外には、」
「興味ない」
「少しは考えてくれ!」

「じゃあお尻」


頭を殴られたような感覚。彼女は貴族だ。エステリーゼ様の友人で初めて会ったときとても綺麗に笑う彼女に惹かれたんだ。今も綺麗に笑っている、けれどどこか違う。黒い、黒すぎる。逃げたしたい。


「お尻ならいいの?」
「いや、それも…!」
「もう、勝負した意味なくなるじゃない、フレンの馬鹿!」


唇を噛んで泣きそうになる彼女に手を伸ばすとたたき落とされた。痛い。泣きたいのは僕だ。何故恋人に…鼻に指を突っ込まれなきゃならないんだ。男としてのプライドが。でも


「………わかったよ、」
「お尻?鼻?」

「……鼻、で」


この二択しかないのなら僕は迷わず鼻にする。鼻以外選べない。やったぁと嬉しそうに飛び跳ねる恋人に先程飲み込んだ溜息を吐き出すとだらしなく笑う恋人に目を向ける。


「ふふー、フレン屈んで?」


言われるがまま屈むと、いきまーすと指を両方の鼻の穴に突っ込まれた。あぁもうどうにでもなれ。


「ぷっ、く…ふふ、」
「………?」
「ふは、ふふふっ」


プルプルと震えながら堪えられていないのに笑いを我慢している彼女。…笑うなら笑ってくれて構わない。もう、諦めた。


「くふっ、美形の鼻に、指…ぷくく、」


満足したらしい彼女は指を抜くと抱き着いてくる。すっぽりと埋まる小さな体を抱きしめると、まだ笑っている彼女ら顔を上げた。


「またやらせてね!」
「え」
「ふふ、次も負けないんだからっ」


次回も、僕の負けが決定した瞬間だった。


彼女の奇行



(恍惚とした彼女の顔に)
(僕はなにも言えなかった)

(これも惚れた弱みなのだろう)



20130414

なんだこれはwww

お友達でありマイスイートエンジェルようちゃんに捧げるもの。
鼻に指をつっこみたがるようちゃんも素敵!可愛い!ラブ!

こんな文でごめんね!ww