リーさん、告る(後編)



とある晴れた日、ナルトとヒナタはリーを連れ立って、公園へ来ていた。
小高い所からは海が一望できて、爽やかな風が吹き抜けると評判の場所だった。

「今日は告白日和ですね!ナルト君、ヒナタさん、素敵な場所を見つけてくださり、ありがとうございます」

キラキラしたいい笑顔のリーに対し、ナルトとヒナタは若干引き気味に微笑んでいた。
リーから告白相手を聞いてから、望みが叶う確率は限りなく低いと分かっている分、その眩しい笑顔を見ていて辛かった。

「まぁ、頑張れよ」

「その…が、がんばってください…」

そう言って、ヒナタ達は木陰の茂みに身を隠し、リーの様子を伺った。

実際のところ、ヒナタはリーにハッキリ告白は成功しないと言うべきだったのではないかと、思っていた。
リーが告白する相手、それはヒナタもよく知る人物であった。

彼女を呼び出したのはヒナタだった。
その彼女はここへ来る理由を知らない。
騙しているようで、心苦しかった。

それでも、誰かの為に何かしたいと思うことは、偽善だろうか…。

ヒナタはナルトの隣で顔を伏せて、後悔の念で落ち込んでいた。

「…告白、か」

ナルトがポツリと呟いた。
ほんの微かな声、風がひと吹きしたら聞こえていないほど、小さな、小さな声だった。

「えっ…」

告白って何、と聞き返そうとしたところ、リーの告白する相手が到着した。

((来た…!ヒナタ、もう少し頭下げろ))

((う、うん))

ナルトの言葉は気になったが、いいよリーの告白タイムが始まるのだ。
告白場所や相手の呼び出しなど、セッティングを任されたのだ。
最後まで見届ける義務があるだろう。
私情よりも、こちらを優先しなければ、とヒナタは気持ちを切り替えた。

「きょ、今日は、いい天気ですね」

キラキラの笑顔は沈んでおり、緊張気味の顔だった。
リーは目立つ太い眉毛を無意識にぴくぴく動かし、口を開きかけた。

「あれ、なんでリーさんがいるの?ヒナタはどこかしら?」

サクラがあたりをキョロキョロ見回し、呼び出したヒナタを探した。
なかなか告白しないリーに痺れを切らしたのか、ナルトが茂みの陰から、小声で発破を掛けた。
緊張で身体がガチガチのリーはその声で目を覚まし、前置きもなく、語りだした。

「砂浜でボクのスポーツタオルを拾ってくれたあの時から、ずっと、ボクの心からあなたが離れることはありませんでした」

突然、何を言うのか理解できていない様子のサクラに気づいていないのだろう。
リーは、畳み掛けるように、全ての想いを言い放ったッ!

「サクラさん!あなたのことが好きです!付き合ってください!」

「ごめんなさい」

「即答かよ……!!」

リーの告白に対して間髪入れずに断ったサクラの言葉に、これまた間髪入れずにナルトがツッコミを入れた。
声が思った以上に大きく出てしまい、さらにツッコんだ勢いでナルトは茂みから出てしまった。

突然陰から現れたナルトを見て、一瞬にして状況を理解したサクラは、はぁと溜息を吐いた。
ナルトをひと睨みして、サクラは玉砕し落ち込み、しゃがみこんでしまったリーに優しく語りかける。

「…でも、お友達としてなら、お付き合いお願いします」

「お、お友達“から”…?」

驚いた顔でサクラを見上げると、サクラはまた溜息を吐いた。

「お友達“と・し・て”です。勘違いしないでください」

リーの大きな目から止めどなく涙が溢れ出て来た。

「は、はぁいぃ…!」

返事も涙声になっていて、何を言っているのか分からない状態だ。
うぉぉぉと獣のように泣き叫ぶリーにどうしたものか困ったサクラは、木陰で固まっているナルトの元へツカツカと早歩きで近づいて行った。

「あんたの仕業?ナルト」

目が笑っていない笑顔のサクラを前に、ナルトはあわあわと慌てふためいた。
ヒナタは立ち上がり、ナルトとサクラの間に割って入った。

「サクラ、ごめんなさい。嘘を言って呼び出してしまって…。リーさんも、お力に添えなくてごめんなさい」

サクラが無表情のまま、近寄って来た。
腕を上げ、ヒナタの額に手を近づけた。
叩かれる、と感じて思わず目を瞑ったが、強い衝撃は無く、ちょんっと額を突かれただけだった。
恐る恐る目を開くと、サクラの顔はニカッと笑っていた。

「これでお相子。ヒナタ、すぐ謝るのはあんたの癖よ。私は寧ろスッキリして、感謝しているんだから」

「え」

サクラの意図が分からず、ヒナタはキョトンとした。
腰に手を当てて、爽やかな笑顔でサクラは言った。

「ずーっと、誰かに視られている感じがして、気味が悪かったのよ」

困ったように、チラリとリーを見た。

「…!き、気味が悪いだなんて…!」

リーがショックを受けて、また落ち込んだ。

「これで誰かわかってよかったし、リーさんには悪いけれど、恋人になるつもりはないってハッキリ言うこともできたし、ね」

リーは涙を堪え、サクラに釣られて笑顔を作った。
涙を拭き、ヒナタを見据えた。

「サクラさんの言う通りです!ボクも想いをぶつけたらスッキリしました!」

意気消沈していたリーもようやく回復したようだった。
告白は玉砕したが、リーは清々しい笑顔だった。

「こ、これで良かったのかってばよ?なんだか強引過ぎね?」

「これでいいのです!」

(…訳分からねぇ…)

ナルトは不満そうな顔をしたが、考えることも馬鹿らしくなったのか、一緒に笑った。

ヒナタも釣られて笑ってしまった。

公園には、4人の笑い声が響き渡った。

しかし、ヒナタは心から笑うことができなかった。
ナルトの言った言葉が、耳から離れなかったのだ。

その言葉が何を意味するのか、ヒナタはまだ知らなかった。




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