お月見ドロボウA

(お月見ドロボウって、あんまいい思い出はねぇってばよ)

ベッドの上で仰向けに寝転がり、幼い頃の出来事を思い出す。



アカデミー生のとき、クラスメイトの男子たちがお月見ドロボウをしようと、はしゃいでいた。
誰も話しかけてくれない、馬鹿にされる。
そんな孤独なとき、数人の男子がナルトに話しかけてきた。

「ナルトも一緒にやろうよ!」

初めて、遊びに誘われた。
それがとても嬉しくて、心から喜んだ。

あのとき、なんで素直にその言葉を疑いもなく受け入れたのだろうか。
それが不思議でならなかった。

やはり、あとでその子の言葉を真に受けなければよかったと後悔した。

ある家の玄関先に、おいしそうな飴が籠に盛られていた。
ナルトが囮になり、他の子供がお菓子を盗る作戦だった。
ワザと見つかるように玄関に近づくと、家主が現れ、ナルトを睨みつけた。

「このバケモノっ!うちに近づくんじゃないっ!」

その言葉に酷く傷つき、動くことすらできなくて、彼の拳をそのまま喰らった。
口の中が切れ、唇の隙間から血が流れ出る。

誰か助けてくれ。

そう振り返ると、男子たちはナルトを指差して笑っていた。
それは冗談で笑っているわけではなかった。
ナルトが殴られることを知っていて、それが面白くて笑っている顔だった。

騙されていた。
信じた自分が憎い。

それから、涙を目の端にいっぱい溜め、家まで走って帰った。



そっと頬に手が添えられた。
いつの間にか、眠っていたらしい。
気が付くと、上着が被せられていた。

優しく振れるその手を握り、その主を見上げた。

「なにを思い出していたの?」

心配そうに覗き込む彼女に微笑んで、首を横に振る。

「なんでもない」

そう言って彼女の腕を引っ張り、自分の身体に倒れさせた。
圧し掛かる彼女の重さが心地よく、そのまま頭も押さえて、口づけした。

「無理しないで」

なぜ、彼女が泣きそうなのだろうか。

「もう昔の事だ」

そう言って、また彼女の唇に自分のそれを押し当てた。


end






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