今のふたり








ひやり、



突然肌に触れた熱(というより冷たさ)に、どっぷり浸かっていた思考から連れ戻される



「ん、……なに」


「くび………」


ゆるり、と
そのまま下へ撫でられ、小さく息を呑んだ


「ッ、……瀬名」


やめろ、と目線だけで訴える





「仕事は?まだ終わらない…?」


「見りゃ解んだろ、先に寝てろよ」


その訴えはあっさりと無視されて、背中にぴたりと張り付くように座られる




ラグの上に直接座り込み仕事を始めたのが夕方頃
周りに散らばった紙屑の量からして、大分時間が過ぎてしまったようだ


「今…、」


「3時……をちょっと過ぎたとこだよ」



すり、と鼻先を後頭部に埋められる



「七海くん、もう寝ないと身体に響くよ……まだ風邪気味でしょう」



スン、と臭いを確かめるように呼吸したかと思うと、肩に頭を埋められる



どうにも居心地が悪く、意識せずとも身体が強ばるのが解る





この距離には、まだ慣れない




緊張が瀬名にも伝わってしまっただろうか
これだけ密着していて、伝わらないはずないのだが




「ね、七海くん」


す、と頭を上げて瀬名が催促する


「自由業なんだから原稿なんていつでも書けるじゃない。無理してこじらせたらどうするの。それに、」

全然進んでないみたいだし…、と周りを見渡しながら言われる



確かに、今日は何も良い文章が浮かんでこず、原稿はちっとも進んでいない




「………ん、」


素直に頷く
こんな時間まで起きていてくれた瀬名に罪悪感もあった


どうも自分は、1度仕事にのめり込んでしまうと眠気も空腹も忘れてしまうらしく、パソコンを閉じた途端、急激に眠気が襲ってきた




一瞬の浮遊感の後、ふわりと毛布に包まれ、
すぐ後ろのベッドに移動したのだと解る



「………瀬名」


後ろから、腹の前に腕を回される


「首がね、」

「くび…?」

「うん。七海くんの首がね、寒そうだなって」


うなじに、瀬名の生暖かい吐息を感じる


「七海くん、襟足短いでしょう。いつもうなじが見えているから」


冷えてしまうと思って、



「別に、そんな……」

「ふふ。眠いの…?」



毛布と瀬名の体温に包まれて、疲れきった身体はもう限界だった



「あのね、七海くん」


ぼんやりとした頭の中に心地よいテナーが響く


「あまり焦らないでいいからね」

「せな……」




やっぱり瀬名には伝わっていて

でもそれを、コイツはちゃんと受け止めてくれる





きゅ、



指先を握れば、そっと握りかえされる



「せな」

「うん。ちょっとずつでいいんだよ」




意識が遠くなる






ななみくん、


途切れる寸前、首に優しい体温を感じた









おやすみ、七海くん





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