弟自慢(過去拍手)
「だぁっ!もう!わっかんねー!」
ぐしゃぐしゃと髪を掻き上げて、エースは持っていたシャーペンを放り投げた。
「なぁ、もう帰ろうぜーマルコ」
そう呼びかけられた、エースの担任であるマルコはかけていた眼鏡を外して目頭を押さえた。
「誰のせいで補習なんかやってると思ってんだい。さっさとそのプリント終わらせろい」
じとり、と心底面倒くさそうにエースを睨んだマルコは、徐に携帯を取り出し、弟へ先に帰っておくようにメールを送った。
「もう無理だって。わかんねーもん。ルフィもギルも待ってるしよー、帰ろうぜー」
マールーコーと駄々をこねるエースに拳骨を食らわせる。
「何なら、この10倍の課題でも出そうかい」
「げっ」
わかんねーわかんねーと呟きながら、再び問題と向き合い始めたエースに溜息を吐きつつ、着信を知らせる携帯を開く。
「……ふ」
遅くなりそうだから帰れと言ったにもかかわらず、教室で待っているという返信につい頬が緩んでしまった。
普段滅多に見せない表情で携帯を見つめるマルコにエースは相手は彼の弟だとすぐに察する。
「ギルなんだって?」
「エースはおいて帰ろうってよい」
「なにー!嘘だろ!ギルはちゃんと俺のこと待っててくれるはずだ」
「ギルはお前じゃなくて俺を待ってるんだよい」
「あー……今ごろルフィのやつ腹空かせてねぇかなぁ」
「ならさっさと終わらせろい」
「昨日の晩飯、からあげ作ってやったんだけどさー、あいつすげぇ喜んじゃって!俺思わず食べてるとこ写メ撮っちゃったもん」
「人の話聞いてんのかい」
「見てみ!これ今の待ち受け」
「あーはいはい。兄弟揃って馬鹿顔デスネ」
「この無邪気さがルフィの魅力だ!アルバム見るか?」
「間に合ってるよい」
「まーギルも可愛いもんな!マルコの待ち受けも見せろよ」
「よいよい」
「ぶっっっっっ!」
「汚い鼻血俺の携帯に飛ばすなよい」
「ちょ、おま、これは……!転送して!」
「するか馬鹿」
「やべー、かわいいギルかわいい」
「人の弟を変な目で見るなよい」
「何だよ。マルコだってルフィを変な目で」
「見てないよい」
「なにー!?家のルフィじゃ満足できないってか!?」
「そうは言ってな、」
「しょうがねー。とっておきの秘蔵画像を見せてやろう。これでマルコもルフィの虜だ!ででん!」
「……」
「どうだ!小学生のルフィ!この犯罪級の眩しい笑顔!」
「はっ」
「!?」
「まだまだだねい。コレを見ろよい」
「!!!!!!」
「誰にも見せるつもりはなかったが、まぁ今回だけ特別だよい」
「ギルの寝顔……!しかも腹チラ!」
「かわいさなら家の弟が1番だよい」
「ぐっ!ならこれはどうだ!去年の夏祭りで綿あめを頬張るルフィだ」
「こっちはフランクフルト」
「ぎゃあああああああ」
「学園祭で白雪姫のコスプレしてるギル」
「ぐふっ。こ、こっちは浴衣姿のルフィだ!」
「浴衣ならこっちにもあるよい」
「ええええええ」
「俺が選んだ浴衣だからな、似合ってるだろい」
「よ、よし。しょうがねぇ。これは誰にも見せるつもりはなかったが」
「……?」
「じゃじゃーん!この前ギルが家に泊まりに来たとき、ルフィと一緒に風呂入ってる写メ!」
「……っ!」
「もうこの可愛さヤバいだろー?ふたりで泡だらけでさぁ。しっかし、こうやって見るとギルって色白いなー。ルフィがこんがり焼けてるからなおさら、」
「馬鹿野郎!」
「えっ!?」
「なんで、なんでムービーで撮らなかったんだよい!」
「ハッ……!」
「泡風呂なんて、またとない録画チャンス……!」
「し、しまったああああああ」
「とことん馬鹿なやつだない」
「うー……ギルもっかい泊りにこねぇかな」
「2度と行かせないよい」
(帰りに泡風呂の素買って帰るよい)
(なんとかしてギルの写メ転送してもらえねぇかなぁ)
(3D映像が撮れるっていうビデオカメラも買って帰るか……)
(そうだ。ルフィに撮ってきてもらおう!ツーショットで)
その頃の弟ズ
(兄貴まだかなぁ)
(あんぱんうっめー)
(き、今日は一緒にお風呂はいろっかな)
(晩飯はオムライスがいいなぁ)
前のお礼文の弟自慢ver。兄貴2人のメモリーは弟の写真でいっぱい。
ちなみにマルコのメモリーは2つめ。
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