こねた。
取るに足らない話たち
▽台風
ガタガタガタッ!
ピシャーン!
「うわっ!」
「あっぶねー。今のは近かったなぁ」
「はぁ……いつになったら収まるのコレ」
「さあなぁ。航海士が言うにはあと半日でこの海域を抜けるらしいけど」
「半日……船壊れそうだけど」
「モビーなら大丈夫だって!」
「……だといいけど」
(はっ!も、もしかしてギルは、台風が怖いんじゃねーか?そ、そうだよな、こんだけ荒れてて雷まで鳴ってりゃ……よし、ここは俺が)
「ま、心配すんなギル!収まるまで俺がついててやっから!」
「は?俺はモビーの心配をしてるんだけど」
「え……?あ、いやでもよ、怖くないか?雷も激しいし」
「雷くらいで怖がってちゃ海賊なんてしてないだろ」
「だ、だよな」
(せっかく怖がるギルを俺がそっと抱きしめてやろうと思ったのに……雷のバカヤロー)
ピッシャァァァァン!
「うおおおっ!んだぁ?さっきより激しくなって…………ギル?」
「…………」
「なぁ、やっぱ」
「何?」
「あ、いや」
(し、尻尾が俺の腕に絡まって……!よく見たら耳も震えて)
「ぎ、ギル。よかったら俺が」
「ギルいるかい?」
「兄貴っ」
「え、マルコ?」
「捜したよい。ほら、部屋に戻るよい」
「うん」
「あ、ちょ」
「あぁ、エース。世話かけたない。お前も早く自分の部屋に戻れよい」
パタム。
「………………まじか」
やっぱり兄貴の傍が1番安心するギルくんでした。
▽恋人…?
「なぁ、サッチって故郷に恋人でもいるのかな?」
「あ?なんで?」
「だって、たまーにホントにたまーにだけど、真剣な顔してどっか遠いとこ見てるし」
「……サッチが真剣な顔?」
「真剣っていうか寂しそうっていうか」
「そうかぁ?」
「あと首からかけてる指輪、すっごい大事にしてんじゃん」
「あー、そういやこの間サッチの部屋行った時、写真立てが」
「まじ!?」
「でも伏せられてて見えなかったけどな」
「なんだよー」
「それにしてもあの変態リーゼントに恋人ねぇ」
「有り得なくはないだろ、やる時はやる男だし」
「まぁな」
「リーゼントじゃなきゃ結構男前だし」
「そうか?俺の方が」
「何だかんだ優しいし、頼りになるし」
「……」
「料理は上手いし」
(え、何コレ、もしかしてギルって)
「サッチに恋人かぁ……」
(いや、ないないないない。だってサッチだぞリーゼントだぞ)
「なんかちょっと妬けるよなぁ」
「サッチィィィィイイイイ」
▽日焼け
久しぶりの暖かい日差しの中、甲板でエースと走り回っていると大きな声で名前を呼ばれた。
「ギル!」
そんな所で何やってんだい!!
すごい剣幕で怒鳴る兄貴に肩が揺れてしまったが、何か怒られるような事をした覚えはない。
隣のエースも、きょとんと目丸くしている。
走りよってきた兄貴に、バフンと大きな麦藁帽子をかぶせられる。
「帽子もかぶらずに外にでるんじゃないよい。日焼け止めは塗ったのかい?」
塗ってない、と素直に首を振ると問答無用で肩に担がれた。
船内に連れていかれるギルを見つめるエースだけが、未だに状況についていけずにポツンと甲板に残されていた。
春の紫外線は夏と同じなんだよい!
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