俺の声は彼のもの | ナノ

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翌朝、紺と食堂で朝ご飯を食べながら昨日さんざん考えて頭にねじ込んだ作戦をもう一度確認する。

へまなんてしない。一気に片付けてやる。

でも一つ心配なことがあった。それはどのタイミングで風紀のチェックが入るのか予測が不可能な点だった。
クラスに風紀のメンバーはいるが聞いたら最後、問題が発覚した際に一番に怪しまれてしまう。

なら、と今日は仮病で休んでやろうかとも思ったが、紺に怪しまれてしまう。

「日和ちゃん?…食べ終わったらそろそろ行く?」

ふいに紺に話しかけられドキッとしながらも頷く。

「ん、じゃ、いこーか!」

どうか、どうかうまくいきますように。




廊下や教室は案の定、今日の風紀チェックで盛り上がっていた。みんな自分のクラスに上条委員長が来ないか、とか先生は誰が来るかなど主にそっち方面の話だったが。

「無瀬くん、おはよう」

一人ぽつんと席に座っている俺のもとへ来てくれたのは土岐くんだった。

『土岐くんおはよう』

スケッチブックにせっせと字を書き、返事をする。
そうすると土岐くんはイケメンなスマイルを見せて「今日の体育、外みたいだよ」と話し出した。

「しかも陸上だって。そろそろプールに入りたいよね。暑くて嫌になるよ」

『そうだね。この学校のプールって広い?』

「うん!屋内プールなんだけどね、かなり広いと思うよ!」

『楽しみだね!』

プールか、ここ私立だし、ないと思ってたなぁ。泳ぎあんまり上手じゃないから少し不安だな。
中学の頃は一度もプールの授業には参加しなかった。理由は響也に付けられた傷がまだ少し残っていたからと、なぜか、たかやんに反対されてしまったせいだ。
だから、小さい頃村でたかやんと川遊びをした経験くらいしかない。

でも今はもう傷はさっぱり消えたし、たかやんもいないし入れるなぁ。

土岐くんとはその後もまったりとした会話を先生が来るまで続けていた。




あ、暑い…

土岐くんが言った通り、3時間目の体育は外で陸上だった。しかも100m走。
練習で2本、本番2本と、合計4本も走ってもうクタクタだ。

授業ももう終盤で、測り終わった人はグラウンドでおしゃべりをしていたりと自由だ。

俺も座りながらぼーっとしていると渡り廊下に紺を発見した。向こうも俺に気付いたらしく手を振ってくる。

暇だし、紺のところに行こうかな。



紺はどうやら先生に頼まれごとをされたらしくこれから職員室へ行くそうだ。走ったあとなのに、元気だな
内容を聞けば先生が出席簿を忘れたとか。おっちょこちょいすぎる。

どうしようかな。暑いし校舎の中入りたい。それかこのまま紺について行って、風紀チェックまでどこかに隠れてしまえば…

「ついていっていい?」

うまくいくかもしれない。


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