禁断トライアングル | ナノ

(01)


Side Kanoko




「やだ・・・だめ……」

「じゃあ、どっちがいいんだよ?」

「ど、どっちって……」


指が、揺れる。


「なあ、言ってみ?どっちだよ?」

「……っ!・・・こっち」


わたしがそういうと、玲央はにやっと笑った。


「じゃあ、こっちだな」


そう言いながら触れたのは、わたしが望んだ方とはちがくて……。


「や、やだっ・・・あ、やぁあっ!」

「言いたいことあるなら言えよ」

「だって、そっちじゃな・・・や、やだぁあっ!」


玲央の指は、容赦なく……。








「はい、そこまで」


パンッと、いう音。そして、玲央のうめき声。



「いってえ・・・っ!なにすんだよ!サコ!」


サコは、玲央の頭を教科書ではたいた。


「たかがババ抜きで、なにテンションあがってんのよ。っていうか玲央。あんたの場合は確信犯でしょ?」

「つーか、今のはかのこもテンションあがりすぎだろ。字だけ見ると、明らかに怪しいし」


ユキが、携帯をいじりながら呟く。


「へ?何の話?」


訳がわからなくて聞き返すと、ユキがにこっと笑った。


「玲央、何の話?」

「うっせーな」


玲央はぶっきらぼうに呟くと、結局ジョーカーじゃないほうのカードをわたしの手から引いた。そして、ハートとクローバーのクイーンを、場に放る。


結局、負けた。



いつも休み時間にやっているババ抜き。
わたしたちは、いつものメンツで休み時間を過ごしていた。





佐古田彩。
わたしにとって、お姉さんみたいな存在の人。いつもいろいろお世話になってる。

溝井玲央。
仲のいい男友達。ちょくちょくわたしのことからかうんだ。

金田由貴。
同上。通称ユキ。なぜか年上女性にめちゃくちゃモテていて、いつも違うOLさんとか女子大生が迎えに来る。


3年間クラス替えのないわたしたちの学校。
高1のときから、ずっと仲のいい友達。











**********


あのあと、わたしは、笹川さん……遥ちゃんの家で過ごすことになった。
しぶしぶという感じだったけど、なんとかOKしてくれて。
だからわたしは今、ここにいられる。


東京の生活は、自由で、すっごく楽しくて。
わたしは、毎日の幸せをめいっぱい噛みしめていた。



ガラッ


「席つけー。授業はじめるぞー」


と、教室のドアが開く。
チャイム、5分前に鳴ってるっつの。


入ってきたのは、遥ちゃん。
……通称、笹川先生。


驚くべきことに、わたしは彼のクラスの生徒になった。
“遥ちゃん”の愛称で、生徒に慕われる、大人気の先生。


女子生徒にも大人気の遥ちゃんが、
実は家では半そで短パンで過ごしていることとか、
酒癖が結構悪いこととか、
寝起きが史上最悪なこととかは……きっと、わたししか知らない。


「遥ちゃーん。授業とっくにはじまってるけど」

「悪いな。ちょっとやることいっぱいあってさ。つか遥ちゃんって呼ぶな」


遥ちゃんは、笑顔で返す。
……寝ぐせ、ついてる。
また寝過ごしたな……。


「とかいってー。本当は、保健の土屋先生と逢引してたんじゃないのー?」

「してねーっつの。いいから席つけ」


そして、なぜか保険の土屋先生とデキてるって噂がある。
一緒に生活してるけど、そんなことない。
……この噂は、正直なんかむかつく。





この高校に入学して1年半。


わたしは、すごく幸せに――。
学校生活を、送っていた。




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