禁断トライアングル | ナノ

(02)


Side Reo




「この式に代入して……」


笹川が、黒板に向かってチョークを滑らせた。
なにやら小難しい式と、解説を綴る。


笹川の授業は、わかりやすいって評判だ。
でも、それはある程度できるやつの話。
俺みたいに、はなから数学なんて死ねばいいと思ってるやつにとっては、先生がよかろうとわかりやすかろうと関係ない。
わからないものは、わからないんだから。


俺は早々に授業をリタイアすると、ちらっと、かのこのほうに目を向けた。
かのこは、黄緑色のシャーペンをくるくるとまわしながら、ノートを取っていた。


……やっぱり、可愛いよなあ。


ほかのやつらには悪いが、クラスでもかのこは断トツだ。
ちょっと聞いた話だと、かのこの母親はもともと女優だったらしい。
女優の娘って、本当にかわいくなるんだな。


クラス中の男子の、あこがれの存在であるかのこ。
共通の趣味(洋楽と、邦画)で、出会ったときから意気投合した。
裏表がないから、美人でも女友だちが多い。
いつから……俺にとって、友達以上の存在になったんだろう。


……と、かのこが俺に視線を向けた。
俺ににっこりと笑いかけると、机に向かってなにか書きはじめる。


……?なんだ?


ヒュッ


こつん!と、白い紙が俺の机に飛んできた。
よく見ると、『玲央へ』と丸っこい字で書かれている。


俺は、ノートの切れ端を机に広げた。


『バカ玲央へ

 明日はスピードで勝負ね!

      かのこ様より☆』


スピード……。トランプの、ゲームだ。
俺の顔は、自分でも知らないうちににやけた。
慌てて、口元を手で隠す。


今は、この状態が心地いいから。
だから、ここから進む気はないけれど……。


かのこからの手紙を折って、筆箱に突っ込んだ。


俺は、穏やかな気持ちで校庭を眺める。


今日、授業が終わったら、あいつらに話したいことがあったんだ。
夏休み、1か月半も会えないなんて、寂しいから。


俺は、机の中に束にして突っ込んであったパンフレットを、ちらっと見る。


大丈夫だよな……?
かのこも、一緒に来てくれるよな?





つーか、かのこは田舎から出てきて一人暮らししているらしい。
だから、反対する人なんかいないよな?


実は、俺も一人暮らしをしている。
俺の場合は、ただ単に親と離れてみたかったって話だけどな。
親が、家賃と授業料だけは払ってくれているけど、それ以外の生活費は、当然自腹。
まあ、当たり前だよな。俺のワガママで一人暮らしをしているんだから。
むしろ、家賃出してくれるだけでもありがたいと思っている。





ちょっと話がそれてしまったけど。


かのこ、行くよな?
かなり前に思いついて、必死に計画を練ったんだ。
今日は、勝負をかける日。


笹川の授業なんか、耳に入らなかった。


俺は、計画をどう組み立てて話して行くかを考えるのに、笹川の授業を使うことにした。






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