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進ちゃんはうるしゃいっ!


「リッちゃんの笑顔を見るんだ大作戦!」。
はじめたはいいものの、成就への道はなかなか厳しい。

オレがガッコに行き始めてから、2週間が経過した。
5月も半ば過ぎ。中間考査とやらまで、あと1週間。べんきょのほうはなかなか順調に進んでいたけど、リッちゃんの笑顔のほうは全然順調じゃないぃ。


「むぅ・・・リッちゃん、笑ってよぅ」

「お前、何をバカなこと言ってんだ。律から離れろ」

「ふにゃあー」


リッちゃんの机に両肘つきながらお願いしていると、後ろから誰かさんがオレの襟足を引っ張った。
誰かさん……言うまでもなく進ちゃんは、じとっとした目でオレを睨む。


「つーかお前、いつまで律に勉強見てもらうつもりだよ」

「ほぇ?」

「……まさか知らねーとは思わないけど、律だって高校2年生なんだからな? 自分の勉強だってあるんだぞ?」

「知ってるよぅ、そんなの」

「しかもなぁ、律は入学から今まで学年1位の座をキープし続けてるんだ。お前に時間取られてる暇なんて……」

「そぉなのっ!? リッちゃん、学年で1番なの!? すごいすごいーっ!」

「っ、てめ・・・」


ぐちぐち言う進ちゃんから逃れて、リッちゃんに問いかける。
すごーい! リッちゃんてば、前から頭いいなーとは思ってたけど、まさか学年1位だったなんて!


「あ、いえ・・・。運がよかっただけですよ」

「そんなわけないよぅ! リッちゃんがいっぱいべんきょしたからだねぇ。偉い偉いっ」

「ほー。永瀬もたまにはいいこというじゃねーか。つーことで律には勉強の時間が必要なんだ。お前はとっとと自立して……」

「だからリッちゃん、教えるの上手なんだねぇ。オレ、リッちゃんのおかげで最近べんきょ楽しいんだよぅ♪」


もう、進ちゃんってばちょーうるさい。
オレは進ちゃんの言葉を無視しつつ、リッちゃんに感謝の言葉を述べた。リッちゃんは少しだけ表情を緩めて、「そうですか」と頷く。
うーん・・・オレが見たいのは、もう一段階上なんですよねぇ。笑顔が見たいんだよぅ。


「今日、放課後はどうしますか?」

「べんきょするっ! リッちゃんは大丈夫なの??」

「大丈夫ですよ。ただ、今日は図書館がお休みなので……どこか別の場所を、」

「なら、リッちゃん! うちでおべんきょしようよぅっ!」

「ご迷惑になりませんか?」

「もちろんだよー」

「では、放課後そのまま行きましょうか」

「うんっ♪」

「ちょ、ちょーっと待った!」


今日の勉強場所についてまとまりかけたとき、ぬっと伸びてきた進ちゃんの手のひらが、オレの顔をつかんだ。
んもーう。進ちゃんったら、うるさいんだからぁ。


「どったの、進ちゃん?」

「どったの、じゃねーよ。お前、律家に連れ込もうとしてんのか・・・!?」

「連れ込むって・・・進ちゃん、やらしーっ」

「は、はぁ!?」


ぷりぷり怒る進ちゃんは、どうやらリッちゃんがオレの家に来るのがお気に召さないらしい。
でもまぁ・・・進ちゃんって、どう考えてもリッちゃんのこと好きだもんねぇ。好きな女の子がほかの男の家に行くのをよしとする男なんていないか。


「とにかく・・・! 律が行くなら、オレも行く!」

「ど、どうしたの? 進ちゃん」

「どうもこうもなーいっ。オレも一緒に行って勉強してやるっ!」


そんでもって、進ちゃんったら一緒にうちに乗り込む気でいるよぅ。やっだぁ、ちょーお邪魔虫。
けれど、そんな進ちゃんの決意は、リッちゃんの一言で撃沈する。


「でも進ちゃん、今日予備校の模試があるって言ってなかった?」

「……うっ、」

「ダメですよ、模試はきちんと受けなきゃ」

「で、でも・・・」


うがぁーと頭を抱える進ちゃん。進ちゃんってば、本当に心配性なんだからぁ。


「大丈夫だよぅ、進ちゃん」

「お前に大丈夫だとか言われたくないんだよ、この下半身バカ!」

「進ちゃんたらひどいぃ・・・。……とにかく、心配しなくていいよぅ、進ちゃん」


相変わらず、進ちゃんってオレに対しては毒吐くよねぇ。リッちゃんに見せる優しさを、10分の1でもオレに向けてくれればいいのにぃ。
まぁ、下半身どうこうは否定できないけどね。言い訳させてもらえるなら、誘われたら断れないだけなんだからねっ! べ、別に・・・オレから誘ってるわけじゃないんだからっ!
……えへへ、ツンデレ風だよん。


「リッちゃんキレイだけど、オレ進ちゃんみたいにリッちゃん抱きたいと思わないから」

「は、はぁっ!?」


言った瞬間、進ちゃんは顔を真っ赤にしてしまった。
でも、進ちゃんが気になってるのってそこだよね??


「万が一リッちゃんから誘ってきたらおいしく頂いちゃうかもしれないけど、それってありえないでしょ?」

「あったりまえだっ!!」

「だったら、大丈夫だよー。オレ、誘われなければ自分からがっついたりしにゃいから」

「……チッ。モテ男の余裕かよ。とにかく、律をその辺の女と一緒にするな。絶対手出すなよ」

「その言い方、ほかの女の子にちょー失礼だよぅ?」


えへへ、と笑いながら言うと、進ちゃんは舌打ちひとつして自席に着いた。
あ。いまの会話、リッちゃんには聞かれてないよぅ。ちゃんとこそこそ話したからね。


進ちゃんもおとなしくなったことだし、べんきょがんばるぞーっ!






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