シリーズ番外編 | ナノ


3 de 遊園地:01


「……」
「はりゃ?」
「おやおやー?」
「あれ?」
「……なん、で?」
「あら?」


顔を突き合わせた瞬間、各々が違った反応を見せた。
上から、無言で眉をしかめる紳くん、首を傾げるあずみちゃん、ちょっと楽しくなってきたオレ、びっくりしている奈緒、疑問を浮かべる譲、なぜか嬉しそうな女王。
いろいろと言いたいことはあるけど、相談したわけでもないのに、遊園地で遭遇なんてすごいよね!


と、いうことで!
かなり強引な展開ながらも、この日“トリプルデート”といえるものが、はじまったのです。








3 de 遊園地!








「ほらほら紳くん! あずみちゃんと2人きりでいたかったのは分かるけどさー。ちょっとは笑ってよ」

「うるさい。分かっているなら遠慮しろ」

「紳、そゆこと言わないの!! こんなこと、滅多にないじゃんっ!」

「あずみ、壱を甘やかさないで。つけあがるから」

「なおなお、何その言いよう!?」


不機嫌な紳くんに絡んでいると、奈緒にとても切ないことを言われた。つけあがるって!


「あずみ先輩、私服かわいいですね」

「あ、ありがとうっ! 美姫ちゃんも、すごく美人さんですね!」

「あずみ先輩に褒めてもらえると、とっても嬉しいです!」


それから、女王は譲そっちのけであずみちゃんにべたべただ。……本当に好きなんだなぁ、あずみちゃんのこと。
ほうっておかれている譲は、ちょっと切なげな目をしながら女王を見ている。
……うぅ・・・不憫だよー。


「まあ、入り口で喋っているのもなんだし、中入らない?」

「そうだねー。あたし、チケット買って・・・」

「もう買ってある」


財布を片手にチケット売り場に行こうとしたあずみちゃんは、紳くんの言葉に慌ててお金を出した。でも、紳くんは受け取る気はないらしく、あずみちゃんの頭の上にチケットを乗せて、悠然と笑いかける。
……くそ、カッコいいぜ。


ちなみにオレと奈緒は、オレの父ちゃんが知り合いのつてでもらってきた招待券で来ている。受験勉強の息抜きにってことで、久々の外出だ。
譲と女王は、女王のお母さんが、この遊園地の系列の会社のイメージモデルをやっているらしく、その流れでもらえたんだって。
そう考えると、3組が同じ日に遊園地に来たのってすごいよねー?


「あずみ先輩方は、どうして遊園地に来たんですか?」

「え、と・・・初めて2人でデートしたのが遊園地だったんだ。だから、たまに遊びに来てるんだよう」

「そうなんですか。あずみ先輩の思い出の地に来られて嬉しいです。……ね、ゆず?」

「え!? ……あ、そう・・・かも?」

「譲、無理しないの」


女王に同意を求められて、しどろもどろになる譲の肩を叩いて、オレはそう言った。
紳くんとあずみちゃんの初デートの場所に来たからって、普通は何の感慨も沸かないよ。どんな感覚だ、女王は。


「どれ乗るー?」


どたばたと会話が続けられる中、パンフレット片手に声を出したのは奈緒だ。
うーん。奈緒ってば、この面子だと一番のしっかりものさんだねっ! さっすが奈緒!!


「奈緒ってば、がんばりやさん☆」

「な、なに!?」


ちゃきちゃき行動する奈緒が、なんだか可愛くて……。腰を引き寄せてから、鼻の頭を人差し指でつんとつついてみる。
でも、ツンデレな奈緒さんは、オレの頭をバシッと叩いてすぐ身を離してしまいました。


「なおなおのツンデレーっ!!」

「意味わかんないから! 場をわきまえてってば」

「…………ゆずー」


頭を押さえて奈緒をうらめしそうに見ていると、オレたちの様子を見ていた女王が、猛ダッシュで譲のもとに駆け寄った。
それから、譲の腕に手を回して、下から譲の顔を仰ぎ見る。
……うわ、譲ってば顔真っ赤。


「どうした・・・?」

「今の、やってほしいかも!」

「……え?」

「腰ぐいってして、鼻の頭つんって!」

「こ、ここで・・・か!?」

「ええ、もちろん!」


実は、この場で一番TPOが読めないのは女王かもしれない。……まあ、毎日お昼休みは譲のひざの上でご飯食べようとするしね。今さらかな。


「……う、でも・・・」

「……だめ?」

「……っ、」

「ゆずー?」


「「…………なんだあれ」」


2人の初々しいコントを眺めていると、紳くんと奈緒が同時に呆れたような声をあげた。
この2人、意外に気が合うのかもね。


「だが、なおなおはやらん」

「なに言ってんだ、アホ。……ジェットコースターでいいだろ、行くぞ」

「ぎゃーっ!!」

「あずみ。………………、な?」

「う、・・・鬼ーっ!!」


紳くんに向かって堂々と宣言してみたけれど、紳くんは冷たい視線を投げつけるだけだ。
……ブリザードです。いろいろと凍りつきました。
それから、あずみちゃんの肩を抱くと、一直線にジェットコースターへの道を歩き始める。
あずみちゃんは叫び声をあげて抵抗しているけど・・・耳元で何かを囁かれた瞬間、ぼんっと真っ赤になった。そのまま、抵抗も空しくジェットコースターへの道を歩かされている。


「……なんていうか・・・濃いねー」

「ねー?」


いまだにうぶコントを続ける譲&女王、まんまと懐柔されるあずみちゃんと、そんなあずみちゃんでいいように遊ぶ紳くん。
奈緒の言うとおり、すっごく濃い面子だよね。まだ入り口だけど、すでにお腹いっぱいだ。


「普通なのは、あたしだけか・・・」

「だねー」


ふうっと、奈緒がため息をこぼす。
それに同意したオレは、大きくうなずいた。





……あれ? オレ、普通に入ってないの?




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