お弁当イベント発生!?
唯たんがエロ系の要求をしてくるだなんて思ってはいなかった。 というか、正直負けるわけないと思ってたから、唯たんがわたしになにを頼むかなんて、まったくもって分からなかったんだ。
……でも。
さすがに、これは予想外だった。 唯たんからわたしへの要求が、まさか「弁当作って」だなんて。
自分で言うのも悲しいけど、わたしは決して料理上手ではない。 あずみに頼むなら分かるけど……なんで? この間のホットケーキ、おいしかったとか・・・かな?
「弁当・・・?」
いぶかしげに聞き返すと、唯たんは一瞬目を動かして、こくんと1度頷いた。……聞き間違いじゃなかったのか・・・。
「なんで弁当なんだよ!」
「い、生田・・・? 千夏の料理の味、分かってる……!?」
的場と奈緒がそんなことを言うのも、無理はないと思う。 ……いや、奈緒にはちょーっとムカッとくるけどね☆ わたしの料理の味は、なんだい?
「べ、弁当作って?」
「うー、ん……別に、生田がそれでいいならいいけど……。……なんで?」
「うぇっ!? あー、っと・・・。オレ、いつも購買だし……たまには、人が作った弁当食べたいなって……。いい機会だし……その、っ……。別に、オレが彼女にしてほしいこととかそう言うんじゃなくて……。……って! 違う!」
理由を聞いた瞬間、しどろもどろになった唯たんは、真っ赤な顔してなにやら弁解を始めた。 その身振り手振りが……か、かわいーっ!!! 目を泳がせたり、唇を噛んだり、なにかを言った瞬間に口元をバッと覆ったり……。 萌ゆる。萌え萌えする……。
「……と、とにかくっ!!!」
唯たんの行動に頬を緩ませないように必死になっていると、バチンと手を叩いた唯たんが、わたしの腕をぎゅっと掴んだ。 それから、一瞬うつむいた後、おずおずとわたしを見上げる。
――――――っっ!!! 鼻血出てない!? これわたし、大丈夫!?
「べ、弁当・・・作ってきて欲しい。それ、オレからのお願いにしちゃダメか?」
「も、ちろん・・・。そんなことで、いいなら・・・明日から、作ってくるね」
やっべー。 呼吸が荒くなりそう……。 なんかもう、最近の唯たんは本当やばいっ!!! なんでこんなにキュンキュンするんだろ。
「じゃ、じゃあ……よろしくなっ!!」
わたしが許可を下した瞬間、唯たんは心底ホッとしたような顔をした。 それから、ふにゃりと笑いました。
鼻血を噴かなかったわたしを、誰か褒めてください。
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「……あれー? 千夏、今日お弁当2つなの?」
「あー・・・。あずみは、昨日いなかったからね。片方は生田の分」
「えぇっ!? ……あっ! ゲームの・・・?」
「そうそう。……千夏、よく作ってきたね?」
そして、次の日の昼休み。 わたしが2つのお弁当箱を持っていることに疑問を抱いたらしいあずみが、小首を傾げて問いかける。 その質問に答えたのは、どうやら昨日思う存分篠崎と愛し合っちゃった奈緒だ。 なんで分かるのかって……? 首の後ろに、キスマーク付いてるから。 たぶん奈緒は気づいてないんだろうけど……。
「自分の分も作ってきたの?」
「うん。せっかくだし」
いつもはわたしもコンビニとか購買で買ってるんだけどね。 お金ももったいないし、いい機会だから自分の分も作ってみた。 ……朝、お母さんが横でわたわたしてたけど・・・。
「じゃ、生田とどっか行って食べておいで」
「……へ?」
生田に弁当を渡そうと席を立った瞬間、奈緒が笑顔で言った。 ……一緒に?
「弁当手渡して、『はいおしまい』もないでしょ?」
「うーん……。でも、生田は生田で的場とかと食べるだろうし……」
「千夏が食べようって言えば、大丈夫だよう」
それから、あずみまでもがにこにこ笑いながら言う。 ……ああ、可愛い。 昨日雪平くんが連れて行っちゃってあずみ欠乏症だったから、めちゃくちゃ癒される……。
でも……唯たんとお弁当かー。
……いいかもしれない。もちろん、萌え的な意味で。 ご飯つぶほっぺたにくっつけたり、口におかず含みすぎてハムスターみたいになったり……。 昼食は、萌えイベントの宝庫だよね!
「そうそう。千夏が言えば大丈夫だよ。……ね? 生田?」
「……う、あ・・・」
一瞬のうちに萌えの世界へ飛んでいたわたしは、そばでされているやり取りではっと我に返った。 千夏が言葉を投げかけたのは、もじもじする唯たん。
「……あ、の・・・笹川? ……べ、弁当・・・」
「作ってきたよ」
笑いかけて巾着を差し出すと、とたんに明るくなる唯たんの顔。 ……か、わっ!!!
「……で、一緒に食べる?」
「た、食べる!」
それから、奈緒に言われたように、食事のお誘いをしてみる。……もちろん、萌え的な理由d(ry
「本当? じゃあ、行こー。中庭でいいかなー?」
「中庭、行く!」
ああ、可愛い……。 なんで片言みたいになってるの……!? 右手と右足一緒に出てる……! なにこれ!? もう、可愛すぎて死ねる!!
「大澤、ナイス!」
「的場……あんた楽しみすぎ」
「…………なあ。おかんって・・・生田のこと……」
「いいんちょ、どうしたのー?」
上から、的場、奈緒、委員長、あずみ。 唯たんに萌え萌えすることしか考えていなかったわたしは、周囲が賑わっていることに、気づくはずもなく……。
「生田、右手と右足一緒に出てるよ? ロボットみたい」
「……! あ、あれ・・・!?」
「……右手と左足を一緒に出して……」
「え、と・・・。分かんねー・・・。いち、に、さん・・・」
「…………っっ!!」
もう、なんでもいいから、鼻血噴かなかったことを褒めてください。
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