奈緒への気持ちは、オレが一番分かってる。
誰よりも大切で、そばにいると触れたくなる。……抱きしめたくなる。 でも、反対にぐっちゃぐちゃのどろどろにもしたくなるし、下手したらめちゃくちゃに抱いて、壊してしまいたいとも思うんだ。 変な嫉妬もするし、ふとしたときに隣にいないと焦燥感にかられる。 ……なんなんだろうね、これ。
オレ、愛とか恋ってよく分かんないんだ。 ただ、物心ついたときからトクベツな存在の女の子が傍にいたから、付き合うなら奈緒以上に大事に思える子っていう感覚はあった。 だから、特定の子はいらなかったんだ。
愛ってよくわかんないけど……なんとなーく、白いイメージなの。 うーん……なんだろう。綺麗な、イメージ。 白い箱の中に、パステルカラーの風船を詰め込んだ感じ。 ……分かりにくいね。でも、そんな感じなんだ。 でも、オレの感情は、愛とか恋とかっていう綺麗なものじゃないんだよ。 白より、黒。 抱きしめたいとかって白い色の上に、壊しちゃいたいっていう真っ黒な感情が上乗りしてる感じ。 ……ね?愛とか恋とは、ほど遠い感情でしょ?
もともと、女の子を抱いたのは興味本位だった。 合コンで声かけられたから、なんとなーく、ね。酔った勢いも、あったと思う。 そしたら、気持ちよかったし、抱いた女の子もなんか幸せそうにしてたから、悪いことじゃないんじゃないかなって思ったの。 奈緒は、「奈緒」であって「女」じゃなくて……。 居心地のいい場所だったから、抱こうなんて思ってなかった。 あの日、奈緒に声をかけたのは、本当に気まぐれ。 ……オレのモノローグを読んでくれた人なら、分かると思うけど……。 シュンヤに言われた言葉をなんとなく思い出して、「そういや奈緒も女だっけ」って思って……。 押し倒したら思わず欲情しちゃって、「キスはだめ」って言われて泣きそうになって、声を聞いて止まらなくなった。
……で、1度抱いたら、今までなんとなく放っておいた自分の感情が、沸きあがってきた。 誰よりも大切なのは、ずっと前から。 奈緒を抱いたことで沸き上がったのは、「誰にも渡したくない」とか「誰にも触れさせたくない」とか「閉じ込めてどろどろに抱きたい」っていう、真っ黒の感情。
オレは臆病で……。 自分の中で昇華しきれなくなった黒い感情を、吐き出せなかった。 ただ、へらへら笑って……。 オレにタルトを持ってきてくれた奈緒を避けて、ほかの女の子の誘いに乗った。 気持ちにフタをして、短絡的に現状を打開しようと思ったんだ。 そんなの、ちゃんと向き合わなきゃどうにもならないのに……。
奈緒の気持ちとか、考えられなかった。 オレはいつだって自分本位で……。 この黒い感情を、どうしていいのか分からなかったんだ。
後悔しても遅いのかな? 奈緒を、失いたくないのに……。
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