Let's 採点 LOVE | ナノ


(01)


「あのね、そんでー」

「はいはい」

「もう、紳くんちゃんと聞いてるー?」


言いながらぷーっと膨れると、紳くんは心底気持ち悪いというような顔をして、俺の頭をガンッとチョップした。


「痛いっす・・・」

「気持ち悪いんだよ……」





今は、お昼休み。
ちょっと早いけど、次の授業は移動教室だから、早めに教室を出たんだ。


そしたら、譲が途中で女王様を見つけたとかで走り出してしまって、オレは紳くんと2人きりで廊下を歩いていた。


オレも結構でかいけど、紳くんはさらにでかい。
横を歩く紳くんの顔を見ると、あまりのかっこよさに、くらっとした。


「……なんだ?」


と、紳くんがオレの視線に気づいたのか、声をあげる。
オレは、ふにゃっと、紳くんに笑いかけた。


「紳くん、かあっこいいなーと思って」


ガンッ


「マジで痛いっす・・・」

「気持ち悪いっつってんだよ」


呆れたようにため息をついて、紳くんが言う。





と、ため息をついて顔を上げた紳くんの目が、ふと止まる。
そして、その口角が徐々に上がっていった。


お、あれだね。
紳くんがこんな溶けそうな顔するのは、彼女が原因しかありえない。


「とけそー」


オレの言葉に気がつかなかったのか、紳くんはつかつかと歩き出した。
そして、社会化準備室の前で所在無さ気に俯いていたあずみちゃんの腕を取る。


「ひあっ!?」


と、あずみちゃんはまるで喘ぎ声のような声をあげ、びくんと震えて紳くんを見た。
すると、紳くんは呆れたように声を上げる。


「お前・・・変な声出すなよ」


とか言いながらー。
甘いよ!声が甘いっす!


自分の腕を取ったのが紳くんだと分かると、あずみちゃんはほっと息をついて、破顔した。
このカップル、端から見てると可愛いよな。


と、そこでオレは気がついた。
あれ?あずみちゃんがいるなら、奈緒もいるんじゃね?と。


だって、奈緒はあずみちゃんと仲良いし。


オレはそれを思い立つと、恐れ多くも紳くんと談笑するあずみちゃんに声をかけた。


「あずみちゃん?」

「ふえ?・・・あ、篠崎くん?」


オレを見たあずみちゃんは、こてんと首をかしげた。
そしてその後、「あ」っと声を上げる。


「ね、奈緒も一緒にいるの?」


そう問うと、あずみちゃんはきょろっと視線を泳がせた。
……なに?


「えっと・・・一緒って言うか、あの……」

「え?何?」


うーんと俯いていたあずみちゃんは、パッと顔を上げた。


「今ね、待ってるの」

「奈緒を?」

「うん」


そう言ったあずむちゃんの肩を、紳くんが抱き寄せた。


「ちょっ・・・紳!」

「この中か?」


とたんに慌てるあずみちゃんに、紳くんが問う。
“この中”と言いながら紳くんが指差したのは、社会科準備室だった。


え?
なんで奈緒が、社会科準備室にいるんだよ?





「あのね、最近奈緒ちゃん……」


その後あずみちゃんが紡いだ言葉に、思わずカッとなった。


「教育実習の先生に、ご飯に誘われてるの」

「………は?」


それを聴いた瞬間、キッと社会科準備室を睨みつける。
そして、無遠慮に、ノックもせずにドアを開けた。





教室の中では、椅子に座ったまま奈緒の手を取る若い教育実習生と、困ったように微笑む奈緒がいた。


「ね、1回だけでいいんだ!食事、行こうよ?」

「い、いえ・・・でも、」


自分の世界に入り込んでいるのか、教生はオレが入ってきたことに気がついていない。


オレは……奈緒の手が、教生の手に掴まれているのを見ただけで、カッと体が熱くなるのが分かった。


「奈緒っ!」


思わず怒鳴るように奈緒の名前を呼ぶ。
すると、奈緒はびっくりしたようにオレを見た。


「わっ!……壱?」


そして、のん気にこちらを振り返る。


「どしたの……?」

「どしたの?じゃないっ!」


つかつかと奈緒と教生の方に近寄り、呆然としながらもいまだに奈緒の手を掴む教生の手を叩き落とした。


「なっ・・・!?」


突然の来訪者に驚く教生。
でも、そんなの知るか。
……奈緒に、触りやがって。


ムカついたオレは、教生を睨みつけた。
そして、奈緒の手を取って、外に歩き始める。


「ちょっと・・・壱!?」


戸惑ったような奈緒の声が聞こえる。
でも……ムカつくんだよ!イライラするんだ!


なんで、オレの知らないところで、奈緒が男に触られてるんだ!!


ドアを出掛けに、紳くんとあずみちゃんとすれ違った。
でも、オレは気が立っていて、びっくりしている2人の脇を、するりと通り抜けた。


そのまま、行き先も決めずに歩き始める。








「とんだ独占欲だな」


オレと奈緒の背中を見て、紳くんがクスリと笑った……みたい。




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