Let's 採点 LOVE | ナノ


(02)


「ちょ…ちょっと!壱!どこ行くの!?」


奈緒の手を引っ張ったまま、ずんずんと廊下を疾走する。
とにかく2人きりになれるところに行きたくて走り回っていたら、第3視聴覚室という部屋に着いた。
視聴覚エリアは、どうやら5時間目の授業がないらしく、授業開始5分前なのにガランとしている。


「壱……?あたし、次授業なんだけど……」

「知ってるよ、そんなの」


つっけんどんに返すと、奈緒がむっとするのが分かる。
でも、でも……。
イラついてるのは、オレのほうだもん!


「何?用ないなら、授業出るから」

「…………」


黙っているオレに呆れたような視線を投げて、奈緒がひらりと手を振った。
オレは、去りかけた奈緒の手をガシッと掴む。


「……食事、行くの?」

「へ?」


低い声で問いかけると、奈緒が眉を寄せて首を傾けた。
オレのイライラなんて何もわかっていない風な奈緒に、腹が立つ。


「あの教生と、食事行くのかよ!?」

「教生・・・?……ああ、さとくん?」

「さと、くん……?」


は、はあ?
なんで奈緒が実習生のことニックネームで呼んでるの!?


「教生ってさとくん……鈴木サトシ先生でしょ?」

「知らねえよ!」


さとくんって・・・。
教生と生徒なのに、なんでそんなに親密気なんだよ!


「なんでさとくんなの?」

「へ?……呼べって言われたから?」

「だからって、奈緒は生徒だろ!?なんでそんな仲良くしてんだよ!」

「え?・・・や、でも……」

「なんで触られてんの!?」

「触られてなんか……」

「さっき腕触られてた!!」


奈緒の言うことを途中で遮りまくって、イライラをぶつける。
奈緒は、困ったように微笑んだ。


「……あたしとさとくんと仲良くすることが、壱に関係あるの?」


その言葉を聞いた瞬間、カって頭に血がのぼった。
だってだって……奈緒が教生と仲良くしてただけなのに、オレめちゃくちゃむかついてたんだ。
なのに、それを関係ないなんて言われたら……。


自分でも良く分からない感情が、胸ん中をぐるぐるする。
どろっとした真っ黒の感情がふつふつ沸いてきて、掴んでいた奈緒の手を引っ張って、視聴覚室の机に奈緒を押し付けた。


「……っ!?」


オレの予想外の行動に、奈緒が言葉を失う。
オレは、しゅるってネクタイを外すと、机に覆いかぶさるように伏せている奈緒の両手を取って、ひとまとめにして縛った。


「……い、ち…?」


自由にならない手を必死に動かしながら、奈緒がオレを見る。
でも、オレの心は黒い感情でいっぱいで、オレを見つめてくる奈緒の顔に、さっきの教生の姿が被った。





奈緒のことは、好きとかそういう言葉で表せないほど、大切に思ってる。
でも、アイツに触られた奈緒は、それに匹敵するくらいむかつく。





驚いたように見上げてくる奈緒を見て、オレはにこりと笑った。






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