愛☆猫 | ナノ


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Side Ayumi



あーもう。
なんでこんな意味不明なちょっかい仕掛けてくるかな……。
っていうか、もう帰っていいんですか?
いいんですよね?


……生徒会室でふうっとため息をこぼした瞬間だった。


ギイッという音と共に、生徒会室のドアが開く。





ここにいない、5人目の生徒会メンバー。
整いすぎた顔立ちと、高い身長。まるで、狼みたいな……。


生徒会長、韮崎 嵐が入ってきた。


こうして見るのは、あの始業式での挨拶以来だ。
もとより、こんなに至近距離で接触する気もなかったけど。


背筋が、ピンと張る。
調査対象だから、とかそういう問題じゃない。
きっと、この人には逆らえない。
そんな、なにかがある。





「……ん?」


生徒会室に入ってきた会長さんは、チラリと視線を上げた。
鋭い眼光で、わたしを射抜く。


「お前は、編入生の・・・」

「み、三宅 歩です」


なんだか視線を逸らしたら、喉もとに食いつかれる気がする。
……いや、まあそんなわけないんだけど。
でも、捕食者みたいな威圧感を感じて、わたしは目を逸らさずに頭を下げた。


「ああ。……韮崎 嵐だ」

「はじめ、まして」


ずかずかと歩み寄ってきた会長さんは、わたしの目の前で足を止めた。
それから、書類を抱えていないほうの手で、わたしのおとがいに指をかける。
あごをくいっと持ち上げられて、わたしは自分より40センチほど背の高い男の顔を仰ぐような形になった。


「・・・なっ、」

「へえ。生徒たちが騒ぐだけのことはあるな」


そう言って、おもしろそうに口角を上げる。
これは・・・副会長さんとはまた違った怖さがありますね。





「……あらしーっ!!」


と。
ドンッという衝撃と共に、会長さんの体が少しだけ揺れた。
それでもわたしの下あごから手を離さずに、会長さんは笑う。


「なんだ?」

「手ェ出すなってば!」


そう言って会長さんに噛み付くのは、瀬奈だ。
が、がんばれ瀬奈!
って、ここにわたしを連れてきたのはお前だ!


「なんだその体勢!マジでキスする5秒前か!」

「瀬奈・・・結構古い」

「あゆむー」


思わずツッコミを入れると、瀬奈がわたしの腹部にタックルをしてきた。
ぐえっとえずきそうになるのを堪えて、見下ろすと瀬奈がお腹に頬ずりをしているのが見える。
……うっ、もう何も言うまい。


っていうか、下あごから手を離してください会長さん。
そんなとこ持ってても、なにもいいことありませんよ。


「……嵐、瀬奈」


低い声と共に脇から近づいてきた柏くんが、べりっと瀬奈を引き剥がした。
それから、会長さんに呆れたような視線を投げる。


「それ、体育祭の資料だろ?データを貸してくれ」


柏くんがそう言うと、会長さんはおもしろそうに笑って、資料とUSBメモリーを柏くんに手渡した。
そして、ようやくわたしの下あごに飽きたのか、手を離してくれる。
……首が、凝りました。


「……瀬奈。三宅を教室まで返してやれ」


資料を受け取った柏くんは、瀬奈に視線を落として、言った。
瀬奈は、ぶーぶー言いながらも頷く。


「仕事効率アップの秘伝だったのになー」


……そんなわけない。ひざの上に乗せて仕事なんて、絶対邪魔でしかないでしょ。
そう思いつつも、とりあえずここから脱出することが優先だと思い、ツッコミは心にとどめておいた。


「じゃあ、歩、寮まで行こうぜー」

「あ、うん。……えっと、お邪魔しました」


なるべく無害そうに笑かけて、生徒会室に一礼。
すると、雫くんが手を振ってくれた。


「あゆちゃん、ばいばーいっ」

「またおいでね?」

「悪かったな。気をつけて帰れよ?」





上から、雫くん、副会長さん、柏くん。
王者である会長さんは、うっすらとした笑みを顔に張りつけて、それから悠然と自席に着いた。






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