愛☆猫 | ナノ


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Side Ayumi



ぼーっとその成り行きを見ていると、書記さんがチラッとこちらを見た。
それから、ゆっくり近づいてくる。


凛とした佇まい。
見られているだけなのに、なぜか怒られるんじゃないかって気分になる。


「……編入生の、三宅 歩だったな」

「は、はい」


わたしの目の前で止まった書記さんは、目を細めてわたしを見てから、うっすらと口角を上げた。


「生徒会書記の、柏 真澄だ。同じ学年になる。……よろしくな」

「はい。よろしくお願いします」


差し出された手を握り返すと、書記さんは困ったように微笑んだ。


「同い年だ。敬語は、やめてくれ」

「あ、はい。……じゃなかった。うん!」


書記さ・・・これも、やめるようにって言われた。
柏くんは、厳しそうな顔を和らげて、わたしに微笑みかける。


……なんか・・・いい人!!


「ますみーん?」


と、市川会計が柏くんの顔を覗き込んだ。
……ますみん。


「なに1人でポイント上げてんのさ」

「……ポイント?」

「ますみんばっかずるいっ!……ってことで、あゆちゃん、僕は雫でいいよー?」

「あゆちゃん・・・」


いよいよ女の子みたいな呼ばれ方だ。
でも・・・柏くんがますみんなら、他意はないんだろう。……たぶん。


「雫くん?」

「くんいらないけどぉー、まあいっか」


へらり、と雫くんが笑う。
わーもう。きれいすぎて、どうしたらいいか分かんない。


「ますみん、編入生やだーって言ってたじゃん!」

「……礼儀のなってないやつが嫌いなだけだ。あの赤髪・・・」


そうこうしているうちに、雫くんが柏くんに絡みだした。
……赤髪の編入生って・・・間違いなく、跳のことだよね?
跳ってば、どんな態度とったのよ・・・。


「ほら、雫も仕事をしろ。……あと、瀬奈。お前、こんなところまで引っ張ってきたなら、責任を持って三宅を返してやれ」


うわあ。
本当、この人は常識人だ!
なんか、まともっていうか……いい人!


「やだよ。オレ、歩をひざに乗せて仕事するって決めたんだから」

「そういうのは、同意を得てからするものだ」


そうですよ!
ものすごく的確な返しですね!!





とん、


柏くんの常識人ぷりに目を輝かせていたわたしは、背後から副会長さんが近づいてきていたのに気がつかなかった。
肩に手を置かれて、初めて彼が真後ろまで来ていたことに気付く。


「歩は、真澄みたいなのがお好み?」

「お好み・・・?」


くすり、と耳に唇があたって、思わず身震いする。


「抱かれてみたい、と思う?」

「いえ。ぼく、男ですから」


動転しないようににっこり笑い返すと、副会長さんは目を細めて笑った。


「あれ?君、ノンケ?」

「はい。女の子が好きです」

「その顔で?」

「……この顔でも、低い身長でも、女の子が好きです」


お兄ちゃんと跳の指導によって、幾分まともな返しができるようになってきた。
「その顔で?」って・・・。失礼な。


「そう。……落としがいがありそうでいいね」

「…………落とし穴には落ちません」


突然落とす宣言をされて、面食らう。
落とし穴って……。やること小学生ですか?


「落としあ・・・?……ははっ。純粋そうなのも好み」


わたしの言葉に一瞬きょとんとした副会長さんは、クスクスと笑いながらそう言った。


「……昴」


と。
柏くんが、眉を寄せながらこちらに近づいてきた。
救世主さんですね。


「昴も、仕事をしてくれ。まだ学園に来たばかりの編入生に、絡むな」

「えー?なに、真澄もお気に入り?」

「そういう問題じゃない。……生徒会の品位を落とすな。仕事を、しろ」

「はいはい。真澄は固いねー」


呆れたように笑った副会長さんは、最後にわたしのほうを振り向くと、にこりと口角を上げた。


「ま、今日は様子見ってことで。また今度遊ぼうね?」

「へ・・・?ひゃあっ!?」


つかつかと近づいてきた副会長さんが、わたしの首筋をつーっと手でなぞり上げた。
くすぐったさと、ぞわぞわという変な感触に驚いて、思わず声を上げてしまう。


「ふふっ。じゃあね」


首元を押さえつけて副会長さんを睨んでみたけど、彼はまったく気にせず……。
にっこり笑うと、自席に腰掛けた。






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