愛☆猫 | ナノ


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No Side



「お兄ちゃん……どこまで来るの?」

「うん?どこまでも」


にっこりと笑う優哉。
歩は、はあっとため息をついた。


「ダメだよ。ここまでで、大丈夫だから」


過保護な兄を振り切るのは大変。
歩はとりあえずにこりと笑いかけて、優哉から荷物を受け取った。
優哉は、ちょっと不機嫌になりながらも、渋々歩に荷物を渡す。


「ありがと。……お兄ちゃん?」

「……歩…ちょっとだけ、ぎゅってしてもいいか?」


寂しそうな優哉の顔を見て、歩は苦笑いした。
うん、でも……。


「いいよ」

「歩……」


ぎゅうっと、優哉が歩を抱きしめる。
しばらく……少なくとも、夏休みまでは会えない。
それはやっぱり寂しいことで、歩も優哉の背中に手を回した。


「お兄ちゃん……。わたし、がんばる」

「おう……。……な、歩?」


うん?と顔を上げると、優哉が真っ赤な顔で歩を見ていた。


「今日だけ、ちゅう……」

「ばかっ!」


どんっと優哉を突き飛ばす。
優哉は、恨めしげに歩を見た。


「なんだよ。……いいじゃん、今日くらい」

「だめ!兄妹でしょ!?」


歩は、優哉をにらみつけた。
優哉はぷくっと膨れながらも、諦めたように立ち上がる。


「はじめは寮、だったな。気をつけろよ?」

「うん。……行ってきます、お兄ちゃん」


最後に、心細げに優哉の手を握って、歩は歩き出した。


「歩!」

「ん…?」


呼ばれて振り返ると、優哉が微笑んでいる。
そして、手を口に添えた。


「また、な!」

「うん!また、夏休みに!」


ぶんぶんと手を振る歩。
可愛いなあなんて思いながら、優哉は口元を綻ばせた。


「また、な」


そして、もう一度口の中で呟くと、トランクから、大きなスーツケースを取り出した。






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