一旦ここで話を止めて、先ほどから頻発している【星】やら【六獣星】やら【猫】やらについて、説明をしようと思う。
【六獣星】は、別名を「六獣情報調査機関」という。ルーツは、鎌倉時代から存在する、忍集団の末裔だ。 世襲で、6つの家系の優秀なものが継いでいる。表舞台には決して出ないが、歴史の節々で暗躍してきた。 六獣とは、各家庭がシンボルとしている6の動物からついた名前だ。リーダーは獅子。仕事の分配や会議の進行など、六獣製を統括している。
星は、調査をする人間のことを指す。六獣の星が集まっている集団……。それが、六獣星なのだ。
星は、基本的に一族の中で優秀な15歳以上の人間がなる。男性でも女性でも構わないのだが、一定の能力値が必要になり、それが男女で差をつけていないため、男性の割合が9割を超えている。 シズカやアユミのように、女性ながらに高い能力をもち、星になる者もいるのだが、それは本当に極稀だ。
アユミ……三毛 歩(みけ あゆみ)は、現在16歳。 普通ならばもうすぐ高校2年生という年だが、六獣は学校には通わないため、学校に行ったことは無い。 栗色の髪と、どこかのハーフなのだろうという青い瞳をもつ。一言で言い表すなら、「絶世の美女」。 今回、新しい星として六獣星入りを果たし、早速任務に付いた。
……ただ…初のお披露目会は、スムーズには行かなかったが……。
筆頭のゲンこと三毛 玄は歩の祖父、タツこと三毛 竜哉(みけ たつや)と、シズカこと三毛 静香(みけ しずか)は父と母、ユウこと三毛 優哉(みけ ゆうや)は兄に当たる。ヒデと呼ばれた三毛 秀男(みけ ひでお)は、三毛家の教育係だ。
歩は、どうしても星になりたかった。才能だとヒデは言っていたが、それだけではない。星になるために、血のにじむような努力をしてきたのだ。……ある、理由があったから。
でも、玄や優哉、竜哉は、それを認めなかった。歩にキケンなことはさせたくない。その一心で、星になりたいと願う歩をなんとかごまかしてきた。
そこで、歩は賭けに出たのだ。 すなわち、「おじいちゃんとお父さん、お兄ちゃんと勝負して勝ったら、星になる。もし負けたら……諦める」。ただの親戚ではない。それぞれ、最前線で活躍するエキスパートたちだ。 3人は、その条件を飲んだ。さすがに負けるはずは無いと思っていたのだろう。
勝負内容は、缶蹴り。 遊びだとなめてはいけない。脚力、瞬発力、判断力、隠れる力、スピードを鍛えられる、すごい遊びなのだ。三毛家が代々訓練に使っている遊びでもある。
そして……その勝負、なんと歩が勝ってしまった。 瞬発力とスピード、判断力がずば抜けていた歩は、家族を打ち破ったのだ。
大慌てで歩を言いくるめようとした瞬間、勝負のことが静香にばれた。 静香は「勝負は勝負」と言い切り、自らも心配しながら、歩の星入りを認めたのだ。
勝負は勝負。 負けた自分たちが悪い。
そう、頭では理解しながらも、胸中複雑な三毛家。 会議での鬱々とした態度には、そういう理由があった。
そして、告げられた任務。 それは、冷静な獅子にはありえない勘違いから起きた、驚くべき任務だった。 抗議する猫。だが、歩は髪を切り落とし、任務を快諾した。
髪を切り落とす。 つまり、男装して潜入することを決めたということだ。
獅子は、ためらいもなく髪を切り落とした歩に、思わず頷いた。 三毛家は、最後まで歩の説得にかかったが、歩は頑として聞かない。 与えられた任務の重要性にビクビクしながらも、やる気は満々だ。
そして、 歩の、韮崎学園への潜入任務ははじまるのだった。
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