◎ゼロ→ムゲン7
「まぁ、俺がいくら人間が好きだって言っても、性的なことは男は無関係だったんだけど」
はぁ、と一息ついて両手を腰に据え置く。
それは、自分自身に言い聞かせているようにも思えた。
「まさか、身体の相性がいいだなんて、思ってもなかったし」
「…良い、のか?」
「はぁ!?良いだろ。どう考えても」
否定されるのが心外だと言わんばかりに見下すような目線を投げてくるも、静雄はベッドの中で三角座りのままだ。
「てめぇとしかしたことねぇんだから、知るかよ…!」
そうして静雄は簡単に初心を投げつける。
普通、これが女性なら男性は一発KOなのだろう。
『だって私処女だったんだもん、そんなコト言われたって…わかんないよ』と言われているのと同じことだ。
まぁ、臨也にしてみれば面倒臭いことこの上ないと思っているタイプなのだが。
「シズちゃん、俺の事好きなんだよね?」
「…う!あ…そ、そうだよ」
「俺に散々な目に合わされてきたのにさ、挙句俺の突っ込まれてアンアン言わされて、それでもやっぱり好きなんだ?」
「…っ!っせぇな…!」
静雄が赤面し、ぷいっとそっぽを向くと臨也は肩を竦めた。
いつも通り、両手の平を翻す。
「…思い通りに行かないなら行かないで嫌いだけど、こういう意味で従順だとまた違う意味で腹立たしいや」
ポツリと呟いて、溜息を深くつく。
「はぁ!?」
そんなことを聞いた矢先、眉間に血管を浮かせ身体を乗り出したが、先程のキスで力が抜けているのを静雄はすっかりと忘れていた。
案の定、勢いあまってベッドから転げ落ちそうになった。
が、臨也の腕に抱きとめられる。
「ッうあ…」
「…キスくらいで勃起しないでくれる。現金な奴」
「ッてんめぇええ!さっきみてぇにまた無理やりヤッてやろうかクソノミ蟲!」
殺す!といつものように怒鳴ると、何故か臨也の表情が柔らかくなった。
近づいて、静雄の顔をじっと見つめる。
「…ッ?な、なん…だよ」
臨也の端正な顔を真正面から目の当たりにすると、頬が赤くなってくる。
重症だ。
だが、次の瞬間、臨也の頭は静雄の鎖骨辺りに沈んだ。
こてん
「…い、臨也?」
「また今度、ね…俺…やっぱりちょっと疲れたみたい。少しだけ寝ていい?」
「は!?」
その一言に耳を疑ってしまった。
黙っていると、臨也はそのまま目を閉じ、静かな寝息を立て始めた。
「…!」
初めてだった。
目の前で寝るなんて、初めてで。
何故かそれが、静雄にとって、とても嬉しかった。
(それって、安心してるってことだろうが…馬鹿野郎)
そろりと、臨也の頭を撫でた。
癖のない漆黒の髪はとても美しい。
「…また今度って…。答え聞いてねぇのに、期待すんだろぉが、バカ臨也…」
腕の中に体温の低い身体を感じながら、起こさぬよう、熱くなっている自分の身体で愛しく包み込んだ。
この時間が少しでも長く続けばいいと、少し女々しい事を考えながら、静雄もまた、眠りについた。
2人の関係の、カウントアップはもう、止まらない。
End.
ゼロ→ムゲン
2011/11/14
2012/6/18加筆修正済み
ノンケな男と、好きになったのが男だった男のお話。2人の可能性は無限大。
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