現実トリップ。1 | ナノ


現実トリップ。1

※痴漢妄想が性癖の静雄。
視姦が性癖の臨也。
「視界トリップ。」の続編です。



相手は誰だって良かった。

だって、頭の中でのことだ。
実際に起きているわけではないし、
自由自在に操れる都合の良い相手役はただの影で良い。
ただ、女は想像し難いから、脳内が勝手に男に変換しているだけ。

誰にも知られたくない自分だけの秘密だと思っていたことが、
世界で一番嫌いな折原臨也という人間とずっと共有していた事に最近気付かされた。
それからというものの、妄想の中での相手役が勝手に臨也にすり替わり、声を出し、俺を詰るようになった。
脳が自身を裏切るなんて、なんてザマだ。
俺はマゾヒストでもなければ、あんなノミ蟲野郎相手に、現実に痴態を見せるほど落魄れていないはずなのに。

なのに、

「んっ、ああっ、そ、れぇ」

下半身を曝け出し、その大嫌いな男に尻を向けて一人慰めていた。
見つかってからはこの契りは毎日だった。
臨也はただ眺めるだけ。
そして、たまに飴を放り投げるだけ。

「俺の指だと思ってる?気持ち良さそう」

ゆっくりと指を入れている仕草をし、その動きを見せ付ける。
…実際、後孔に入り込んでいるのは静雄自身の指である。

臨也の指を見て、自身のものとリンクさせて身体を一段と大きく震わせた。

「ゆ、び…ッ」
「淫乱だなぁ、三本も入ってる」
「ひ、ぐ」

毎日拡げていれば否が応でも収縮が簡単になる。
毎日昇り詰めれば身体も慣れて果てやすくなる。
毎日見られ続けていれば…


わからなくなる。
折原臨也の事が。

「はぁっ、ん…!」

びくッ

臨也と目線を合わせたまま、静雄は薄くなった白濁を飛び散らせる。
そのときの臨也の微笑みは、至極美しく、澄んだ瞳をしていた。

「はぁ…イくときのシズちゃんの顔、やっぱりたまんないね」

臨也は左頬に手の平を当てて、恍惚とした表情を浮かべる。

(俺は、お前のその顔が、たまんねぇよ)

息も途切れ途切れに、終わっても尚目線だけで伝わらない会話をする。
歯を食いしばり、その歯の隙間から熱い吐息が溢れても彼に届く事はない。



あれから毎日臨也と俺だけの非日常が繰り返されている。
見る側と見られる側、決して触れはしない情事。

視線上だけのセックスだ。

互いに其れを望んでいたし、間違いはないと思っていた。

でも

少しずつ、それが変化していくのを、俺は感じ取っていた。
行き着いてはいけない、心の深淵。

(畜生…。)

「じゃあね、シズちゃん。明日はもっとイイもの見せてよね」

臨也自身は一切慰めをしていない。

静雄自身、躊躇っては手を伸ばすことをやめてきたせいか、臨也が静雄の痴態を眺めているというだけで勃起しているのかしていないのかは判らなかった。

静かに静雄のアパートを去る臨也の背中を、静雄はどっと押し寄せてきた疲労感に苛まれながら視線だけで見送った。

臨也は気付いているだろうか。

俺も、お前の事を見てる、ということを。

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