Un conte de fees
──────この世界で2人きり

※ATTENTION※
実際に管理人が見た夢の話で、
バトルロワイヤル!編です。
死にネタ注意



   い ざ や は ど こ だ ?




拳はもうずっと唸りっ放しだった。
…記憶が曖昧だ。


喧嘩人形と謳われ、公共物破損を繰り返し、警察沙汰にも程なく見舞われ、遠ざけられていた存在。

―平和島静雄。


だけれども、人を殺したのは初めてだった。
俺は暴力が嫌いだ。
殺しなんてとんでもなかった。


だが、幽が目の前で殺されてから、理性がぶっ飛んだ。
誰が幽を殺したのかさえ、もう覚えていない。
俺が誰を殺したのかさえも、覚えていない。



ただ、気軽に拳を振れば、当たった首がひん曲がってそのまま動かなくなるだけだった。

―…あぁ。

俺は今まで本当に、"死なない程度"に気を遣いながら、あのノミ蟲野郎や喧嘩を吹っ掛けて来た下らない輩を殴ったりしていたんだなぁ。
と、実に下らないことを思っていた。



「いざ…や」




------------------

こうなった事件の原因は未だ謎だ。
池袋、いや、東京全域が封鎖され、濃い霧に見舞われた。

気が付けばアスファルトの上で倒れていて、故意的に眠らされていたのだと知る。
首には頑丈な首輪が装着されていて、取ろうとした瞬間、隣で先に起きていた上司のトムに制された。
まもなくラジオ、テレビで、何者かが薬をバラまいただの、何だか奇妙なニュースで持ち切りになり、
東京から出ようものなら、待ち構えている特殊部隊に撃ち殺されるという、
完全に非日常の真っ只中となった。

程なくしてテレビも映らなくなり、情報が行き交う都会で情報網が途絶えるという事は、
それだけで多くの人々を恐怖に陥れる。


首輪は無理に取ろうとすると爆発し、首が吹っ飛ぶらしい。
現に近くでその模様が見受けられた。

死亡すると生存確認のセンサーがその首輪を通してどこぞかに転送される。
及び、期限が来れば自然に機能停止するとの最後の報道だった。


そう、時間は限られているという。
三日以内に、自分以外の者を全て消してしまわなければ全ての首輪が爆発する。
それは誰かと共存することも不可能であることを意味していた。
三日経った後、一人だけ生き残っていれば、ここから出る事が出来るシステムである。



「くだらねぇ…、どうせ臨也の野郎が関わってやがるに違いねぇ…ッ」


ギリッ、と歯を食いしばり吐き捨てると、
トムが首を横に振った。


「一人で出来る事じゃないさ…いくらなんでも、こればっかりはな」


トムはくるりと背を向けると去ろうとした。
俺と一緒に居れば安全なのに、何故行くのか問いただせば、


「俺ぁよ、お前殺すのも、お前に殺されるのも嫌だからさ」


じゃあな、そう言って煙草を吹かし、門を曲がった。
止めようと駆け寄ったが、次の瞬間、見えない門の向こうで鈍い音がした。


頭の中で何かが崩れる。
形を失くした上司の死を目の当たりにし、気付けば辺りは血の海だった。



非現実的なことが、現実に。
今までの非日常さが生温い物へと変っていく瞬間。



「…ッ」



俺は走った。
幽は大丈夫だろうか、まさか東京に居るのだろうか。
海外ロケ、いや、何でもいい、東京じゃないどこかへ行っていてくれればそれで…−

想いは期待とは大きく外れ、目の前に現実として現れた。
特殊部隊に聞けば、俺を探して、自分からこの区域入ったのだという。


「何故通した!何故死ぬと判っていて、」


俺は次の瞬間部隊ごと吹っ飛ばした。
掻っ攫った銃を2つまとめて放ち、いつも見ていた池袋の風景が惨劇の舞台へ早変わりした。
そしてそれがもう二度と戻らない事を確信した。



「うぉおおおおおおおおお」



俺が愛する者が次々と居なくなったのだ、
同じ町には決して戻らない。
いや、戻さない。



しばらくして静寂が訪れる。
いつの間にか建てられた東京を囲む大きな塀は、頑丈に作られているのか俺が殴っても凹むだけだった。

血まみれの特殊部隊の人間は皆、フルフェイスの顔マスクをしていたが、
撒いた薬を吸わないためだったのか、
今の俺にはそんなことを考えている余裕はなかった。



横たわる幽を抱き上げ、
まだ荒らされていない建物の中に連れて行った。
全てが終わったら埋めてやる、と、抱きしめて誓った。

だから俺はまだ死ぬことは出来ない。




殺しても殺しても、辺りでは人が蠢いていた。
どうしてだろうか、生気は感じられない。

走っているうちに、来良の制服の彼らも横たわり、
絶命していた。

その近くに座り込み、息を整える。
罪歌を宿す子とも少し前までは話もした。
もうその子とも話すことは出来ない。


強い筈の彼女は、妙な薬に踊り殺戮を繰り返す人々を愛し尽くせなかったのだろうか。


とにかく、彼女たちもちゃんと後で埋めてやろうと思い、
幽を置いた場所へ3人まとめて抱えていった。





だが、横たわらせた場所に幽の姿はなく、

突如、
引きずるような物音に振り返る。


「…かす、か…?生きていたのか…!?」


死んだ筈の最愛の弟が、"人間らしくない"動作で飛びついてきた。


ガブリッ


「ぐぁ…ッ」


本能的に咄嗟に引き剥がすと、幽だった身体は、
目の色は血走り、涎を垂らしながら、死臭を身に纏った物へと化していた。


「ッかす、か…・・・・・幽ぁぁああ!」



  や  めて く    れ




ぐ しゃ、り




    ・ ・  ・  ・・ ・・・・・

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