視界トリップ。1 | ナノ


視界トリップ。1

※痴漢妄想が性癖の静雄。
視姦が性癖の臨也。



『妄想』 が性癖の平和島静雄、その日課は集団痴漢されること。

『観察』 が趣味の折原臨也、その日課は妄想している平和島静雄を視姦すること。

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静雄はいつも通りのバーテン服を着込むと、洗面台にある鏡に向かって蝶ネクタイの位置を確認した。

「うっし…行くか。」

弟の幽からの餞別だったそれは、今では職を変え、取り立てのアシスタントである今も尚、この出で立ちで行動している。
街で見かけられれば、直ぐに人は静雄の存在を認識するだろう。

『池袋最強の男』 『喧嘩人形』

そう、謳われている。


「いってきます」

小さく挨拶をするも、一人暮らしでは何の返事も返ってはこない。
ドアを閉め、カンカンカンと音を鳴らしながら錆付いた階段をその長い足で降りていく。

「おはようございます」
「あら!平和島君、おはよう。お仕事がんばってね」
「はいっす」

大家のおばちゃんに軽く会釈をしつつ、サングラスを掛け直した。
実に爽やかな朝だった。
煙草を一つ口に咥え、慣れた手つきで火をつけるとゆっくり吸い上げる。

「…天気良いなァおい」

仕事先へ足を向けていると、毎日必ず通る電車脇の道。
踏み切りの音が聞こえる。

カンカンカンカン

「…」

電車が通った。

通勤ラッシュの時間なのだろう、人がぎっしりと詰まった状態で静雄の視界を横切った。

「…朝は電車に乗らねぇからな…」

そうでなくても静雄は、たまに乗って新宿に行くくらいの行動範囲だった。
仕事でも移動は車ばかりなので、想像でしかあのラッシュを感じることが出来ない。

(ぶつかったら、ぜってぇ殴りそうだな、俺)

肩を竦めながら、ポケットに手を突っ込み、また歩き出す。

「…」

そして、一日の内に起きる一回目の、その時間が今―。
静雄は目を閉じて煙を肺に送り込んだ。



―今、此処は電車の中。

ガタンゴトンと規則正しい音が流れる中、静雄は窓の外を見て立っている。
いつまで経っても次の駅に辿り着かない。
どうしてか、静雄の周りには沢山の男が居た。
そして、更にその周りには女性の姿は皆無であった。
男たちのだれもが顔は見えず、手や動作だけがリアルに映っている。
言ってしまえば、コナンに出てくる真犯人のように黒塗りなのだ。
途端、静雄の背後に大きな影が忍び寄る。

『…?』

下半身に違和感を覚えた。
少し振り向くと、顔を背けて別の方向を見ているであろう男の姿。
ただ、静雄には真っ暗で何も見えない。
存在だけがはっきりと其処に在るだけだ。

『っ』

尻を撫でられている。
ぴったりとくっついた手の平が、少しずつ移動しながらズボン越しに密着する。
一度手を払いのけるも、その男の影は怯まない。
続いて、もう片方の手を静雄の前に回して、挟むように両手で触れてきた。

『ッ!』

不覚にも、静雄はそれだけで息が上がった。
撫で回すように触られ、息が荒くなる。
今此処では電車の音と、静雄が自分で出す吐息の音しか存在しない。
黒い男たちからは、無音の感触だけが其処に在った。
AVによくある詰るような声や、「ここをこうされて気持ちがいいんだろう?」などといった陳腐な台詞は存在しない。
―静雄がそれを求めていないからだ。

『…ッ』

静雄は窓際の手すりを掴んだ。
男の影が増えてくる。
左右から黒い手が伸び、シャツのボタンを外され、ズボンの中にもとうとう手を差し入れられた。
尻の割れ目に指を這わせられると、ビクンとはねる身体に静雄は舌なめずりをする。
後孔を指の腹でノックされ、思わず腰が浮く。

『…!』

そして―



(…あ、着いちまった)

妄想の最中、現実の世界の静雄は、会社の目の前に到着していた。

「おーっす静雄、今日も宜しくな〜」
「おはようございます、トムさん。」

丁度同時刻に、先輩である田中トムも出勤しており、玄関口で鉢合わせる。
会釈をして、一緒にドアを潜った。
気付かれはしないが、胸の鼓動が早い。
静雄は、気を取り直して職務に励む事にした。

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