チョコレィト・メッシー2 | ナノ


チョコレィト・メッシー2

―午後11時半

ガン ガン!

「おや?」

長い廊下の向こうでドアを蹴る音を耳にした臨也は、チェアーから腰を上げた。

「はいはい」
「おらあああ!臨也ぁあああ!開けやがれコラ!!」

ガチャ

「そんな怒鳴らなくても聞こえてるし、そもそも近所迷惑だから。何時だと思ってるの?」

息を切らしながらズカズカと断りもなく玄関に上がりこむ静雄。

「テメェ、さっきはよくもからかってくれたなぁ?臨也くんよぉ?!」
「ふふ、凄く怒ってる。でもちゃんと靴は脱いで上がって…そこは凄く好きだよ」

腕を組んでうんうんと頷いて満足げな笑みを零す臨也。

「好き…って、誤魔化すんじゃねぇ!」

静雄は怒鳴りながら持っている箱を押し付けた。

「…っと、何これ、まさかお返し?来月でよかったのに。せっかちだねぇ」

臨也が胸で受け止めたそれは、歪みに歪んだケーキの箱だった。
手際よく開けてみると、原型を留めていないチョコレートケーキが無残な姿で出迎えてくれる。
ケーキの上に乗っていたのだろう、クマの砂糖菓子が床に転がった。

ぽとん

「…へーすっごく甘そう」

心の篭っていない声音で素直な感想を言ってみる。

「言っておくがめちゃくちゃ甘いやつだからな、全部食えよぜ・ん・ぶ!」

不敵に笑って指を差し、いけしゃあしゃあと告げる静雄。

「うん、有難う。じゃあ紅茶でも煎れようか」
「…あ?」

さらりと流されて指を差したまま固まる。

「今から全部食べるから、シズちゃんもおいで」
「え、俺は別に嫌がらせに来ただけで」

面食らってロボットのような動きの静雄を横目に、ふっと口角を上げる臨也。

「ぐちゃぐちゃだし大きなお皿に盛り付けよう、落ちたこれは別にいいよね?」

クマの砂糖菓子を拾い上げ、捨てていい?と目で合図する。
だが静雄はそれどころではない。

「何で俺が居なきゃ駄目なん…」
「あれ?食べさせてくれるんだろ?」
「はぁ!?」

その一言に血が一気に頭へと集まった。

「おまっ、頭おかしいんじゃねぇのか!?相手見やがれ、俺だぞ、あの、平和島静雄だぞ!テメェの生涯のライバ…」
「それ言ってて恥ずかしくない?」
「ル…っ」

ギューン!と、血圧が上昇してとうとう茹蛸状態になった。

「まぁ、まさかシズちゃんが今日中にバレンタイン返しをしてくれるなんて思ってなかったけど」

キッチンへ入った臨也は、大皿に歪んだホールケーキを乗せ直してフォークとナイフを手に取った。
そして、カップを二つ戸棚から出して茶葉を選んでいる。

「ミルクティーにするよね?」
「ああ、砂糖多めで…って、ちげぇよ!」
「座れってば、存在だけで煩い本当」

苦笑いしながら臨也はテーブルにお皿とカップを置いた。
静雄も状況が飲み込めず、勢い余ってソファに腰掛ける。

(なんだ?なんだ?どういうこった!?)

「フフ、喧嘩しないのがそんなにそわそわする?」
「お、おお、…おお?」

返事をしながらも疑問が浮かび、首を傾げて生返事をする。
キッチンの中からお湯の沸いた音がして、臨也は腰を上げた。

back/3

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -