ストップマイ××× 2
「え!?ムラムラを止めたい?」
「誰もそんなこと言ってねぇえええ!!」
バギャァア!!!
高価そうなテーブルが、鈍い音を立てて亀裂を走らせ左右に分散した。
…静雄の両手の平の圧力のせいで。
「うん…冗談を言うもんじゃないって判ってた筈なんだけど、うん」
コーヒーを震える手で持ちながら冷や汗を掻いている新羅。
目線を上にしてテーブルではなくなった物体を見て何かを計算している。
「お願い静雄、もう何も壊さないで僕もう何も喋らないから」
「それじゃ困んだよ!余計なこと言ってねぇで的確なことだけ言え!!」
「横暴だなぁ」
腰に両手を当てて大きく息を吸う静雄は、仁王立ちのまま新羅を見下ろしている。
「だってさぁ、そういうことでしょ?臨也見てるだけで興奮するって、それ…」
「?」
途中まで話して顔を背ける新羅。
「きもちわる…」
「てめぇええええ!!」
ガシャアアアアン!!
我慢できないこともあるもんだと新羅は改めて学習する。
セルティが唯一無二の存在である新羅にとって、悪友二人の痴情の縺れやのろけ話など、笑い話にしかならないのだ。
『まぁ、要はあれだね、静雄は臨也が大好きなんだね』
『そうだよ悪ぃかよ』
真顔で即答すると新羅の眼鏡がパン!と…割れたような気がしないでもない。
突然付き合い始め、10年近くに渡る因縁は何だったのか…今となっては全く持って不明だ。
新羅は薄々気付いていたようだが、今更こうなるとは思っても見なかったのだろう。
「俺だって何であんなやつ好きになったのかわかんねぇ…」
ポケットに手を突っ込みながら煙草を吹かす。
新羅の驚く言葉が耳に残っている。マジしつけぇ。
『性欲を止める薬なんて俺は担当外だよ、ていうか止めないでいいじゃない』
『じゃあどうしろってんだよ』
『爆発させたら?いっそ』
満面の笑みで流す新羅をぶっ壊してやろうかと思ったが、
『そうだな』
と、即答してしまった。
元より俺は性欲が強いのだ。
好きな奴とセックスしたくて何が悪いのか。
「あー…してぇな」
紫煙が空を仰ぐ。
結局何の解決にもなっていないが、随分と気が楽になった。
再び臨也のマンションへと足が向かっていたが、突然目の前に先輩であり上司のトムが現れた。
「お、静雄じゃん。何してんだ?こんなところで」
「っすトムさん。今帰りっすか?」
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