いけばな
──────飾り立てて、それで御仕舞い?
辛くても、
声が出なくても、
痛くても、
…そんなの、全部、嘘。
辛くないし声も出るし痛くもない。
平和島静雄という人間には、
世の中の摂理という物がいくらばかりか通じないところがある。
刃先は5ミリしか刺さらないし、
拳銃で撃たれても次の日には元気に回復している。
頭を殴られようが、血が出ようが、
痛いと思うのは身体ではなかった。
心だけ、ちくり、と。
少しだけ、そう、少しだけ痛む。
それだけだ。
二十年半ば生きてきて、一つの答えに辿りついた。
―壊すくらいなら、壊される方が、いい。
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「じゃあ、お前…女抱いた事ねぇの?」
「ねぇっすよ?」
「は」
ガードレールの傍でしゃがみこむ2人の怪しげな男が居た。
ハンバーガーをもふもふと食す静雄の傍らで、危うくコーラを落としかけたのは先輩である田中トム。
今日は仕事が早く片付いたので、何か食うかと提案すれば此処で言いとファーストフードを選ばれた。
「お前よぉ、いっつもこんなんばっか食ってっと、身体壊すぜ」
話を変えて本音を言えば、マヨネーズを口の周りにつけたままサングラス越しに静雄はトムを見上げた。
「壊さないっすよ、俺は」
「…。あのなーそういう意味じゃねぇって」
「…っス、判ってますけど。」
もふ。
”こんなもの”を良く食べる割には、
身体は細いし体型が偏っているわけでもない。
首無しライダーよりもやや都市伝説になっている人間に対してトムはため息をつく。
「俺はお前を心配してんだよ、ただそんだけなんだからな、静雄」
「あい、わかってもふよ」
うんうん、とほお張りながら最後の一口をあが、と放り込む。
「にしたって、お前みたいな面で?背もたけぇし?結構優しい奴だとも思うし…、ま!短気なところを除けば…だ。モテると思うんだがなー」
「いや、殺しちゃマズイっすからね」
「…お前ね」
だから、どうせなら、俺を壊す側に来てくれないかな
「あ?何か言ったか?」
「いえ…バニラシェイク、もっかい買ってから帰ります」
「甘党め」
くす、とトムが苦笑すると、静雄はサングラスを掛けなおし、立ち上がった。
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