小説 | ナノ
勘違いでも(謙蔵)


靴箱に入っていたのは小さな紙切れ一枚。
かわいらしい封筒にも入れられていない紙切れ一枚だけ…というは初めてであった。
乱雑に折り畳まれたそれを開けるのは、些か楽しみであった。
けれど、それを開いた瞬間げんなりとした。










「あのなぁ…謙也…お前何の用やねん」

「し…白石!来てくれたんか!」


嬉しそうに顔を輝かせるのは…よく見知った顔。忍足謙也であった。



「こんな紙入れて…勘違いするやんか…こんなめんどくさいことせんでも、メールしたら一発やんか」

「か…勘違いしてくれて俺は一向に構わんのやで!?」


異様に鼻息の荒い謙也にビビりながらも、親友が何か深刻な相談を抱えているのでは、と心を落ち着かせる。


「で、謙也…お前俺に何の用やねんな」

「お…俺と…つつ付き合って欲しいねん!!!!」

「つ…つつきあうって…何を突くねんな」

「突くって…白石…積極的やな…」

「きっもちわるい顔すんなや!何やねんお前!」


一人でニヤニヤする謙也に白石は突っ込むのに忙しい。
にしても、謙也のこんな顔は初めてで、少し楽しかった。


「そ…そんな!白石俺今傷ついたでぇ!」

「…………めんどくさいわぁお前…はよ本題に移りや」


そう言うと、謙也は少し寂しそうな表情をしたような気がした。


「白石…ほんまに分からんの?俺がこんなにお前を好きやのに」

「分からんよ、お前が俺を好き………とか………好き………?」


こくこくと頷く謙也を見ると、日本語が理解出来た白石は急に顔を背けてその場から逃げ出していた。


嘘や嘘や!!!
そんなん全っ然わからんかった!!!


なんて、本人に知れたら恥ずかしいので、白石は振り返ることなく走り去った。


謙也が泣きそうに白石ぃ!と叫んでいたのは言うまでもない。



「白石ぃ!!!なんで!?なんで逃げるんやぁぁぁ!!」






^^
ピュア3の2

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