「うっ…疲れた…」
「あはは、お疲れ様」

分史対策エージェントの先輩に手ほどきを受ける。それはそれは、過酷というまでではないが、それなりにハードなものであった。

「…にしても、ピナコラードさん。あなた本当に運動能力がないのね」
「ぐ…その通りです…」
「まあ戦闘時は骸殻を使えば大体カバーできるけど…」

生まれてこの方、運動をそれほど積極的に行っていたわけではないのだから無理もない。人の限度というものを考えてメニューを考えてほしいものであった。

「それじゃ、あと少ししたらお昼にしようかしら」
「はー、…そうです、ね…」

それにしてもクランスピア社は本当に広い。私がいつも利用している空間だけでも、それなりの会社レベルであるのに、まさか地下にまでこんな演習場があるだなんて。施設完備は申し分ないんだよなあ、配慮は少し足りてないと思うけど。

「やってるみたいだな」
「ユ、ユリウス室長!?」
「お疲れ、二人とも」

と、そこに現れたのは我らが分史対策室室長の姿であった。随分と久しぶりに顔を見た気がするが、いつもと変わらないような優しい顔であった。最後に会ったときのことを考えると、それも少し怖いのだが。

「ピナ、この間は悪かった」
「え、ええ…はい…」
「お前が骸殻の契約をしなければ、遅かれ早かれお前は殺されることになる。……社長によって」
「…はい」
「まあでももう大丈夫だ、お前はこうして力をつけているんだ。社長も納得している」
「…社長の考えがよくわかりませんけど、そういう心配がもうないなら、とりあえずはそれでいいですよ。ユリウスさんが私を殺すなんて思ってませんし」

あまりに申し訳なさそうなものだから、許さざるを得なくなってしまう。もちろん、本当に許したわけではないけれど。たった一人の義兄なのだから、根に持つのは控えようと思った。そんな彼は何やら私たちに用があるようで、嬉々としてそれを発したのだ。

「それはそうと、分史対策室ではお前の歓迎会を兼ねて鍋をしようと思ってる」
「いきなりどうしてそうなるんですかユリウスさん……!?」
「日程は明日に決まったから、好きな具材を持ってきてくれ。トマトは俺が持っていくから大丈夫だ」

い、いやいやちょっと待ってください。今真剣な話してましたよね!なんで鍋の話になってるんですか。鍋は嫌いではないけれど、それにしても突然すぎるでしょうユリウスさん。私の百面相は義兄には届かず、見かねた先輩エージェントからのツッコミが入る。

「室長、いつも突拍子ないですね」
「こういうのは早いうちにやった方がいいだろう」
「え、ええ……?」

義兄も社長も、いまいち何考えてるかよくわからないです。歓迎会だというのに、私の拒否権はないらしいので、明日に備えることになった。鍋、鍋かあ…それにしても突然だなあ…。


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12/19
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