なんで西屋はこうまで俺に構うんだ。
どうして俺も俺で大人しくこいつの膝に収まっているんだ。
いつものようにぽんぽんと膝を叩いて座れよとアピールする西屋なんか無視すりゃいいだろ俺も。
「まーた難しいこと考えてんだろ、今野?」
俺の肩に顎をのせて問うてくる西屋。
「近ぇよ」
「なら座らなきゃいいじゃんかよ」
「座らせたのはお前だろ」
ばれたかー、とにかりと笑う顔を横目で見て溜め息をつく。
これだ、この顔のせいだ。
いつもいつも拒絶してやろうと思うのに、この笑顔を向けられる度にほだされてしまうのだ。
「やっぱ今野はいいな、うん。程よい柔らかさと抱き心地」
「誤解呼ぶような言い方やめろよ、悪かったな西屋みたいに締まってなくて」
腰の前でゆるく組まれた西屋のがっしりした手を見て悪態をつく。
野球部のピッチャーだけあってよく焼けて、びっしり筋肉がついている。
少し羨ましくもなってその筋肉のラインを指でなぞると西屋はくすぐってぇよ、と笑った。
「今野はそれでいいよ、他にこんな可愛いやついねぇし。いても俺今野がいい」
「可愛いってなんだよ」
ほめられたことや必要とされていることに悪い気はしないのに、口をつくのは毒を含んだ言葉ばかりだ。
「なに照れてんだよ」
「照れてねぇよ、バカ」
あーそう、と西屋は笑う。
心を見透かされているようで居心地が悪いのに。
相手が西屋だというだけで、それはそんなに悪いことじゃないような気がした。
「本当、素直じゃねぇよなー」
と、顎を肩にのせたまま何がそんなに嬉しいんだか、嬉しそうに呟く西屋に何故だか俺までちょっと嬉しくなったから。
「……悪かったな」
と、少しだけ笑いをのせて言ってやれば。
悪くねぇし、そゆとこが好きだといつものように返してくるので。
ちょっとは素直になろうかなーと一人思案して、
「まーた難しいこと考えてんだろ」
と、西屋に笑われた。
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