ふと、聞こえてきた誰かの声にその言葉の続きが消える。
後ろを振り向けば、まだ幼い少女が瞳をクリクリとしながらこちらを見ていた。


「お花、買いませんか?」


篭の中に入っているのは淡い小さなピンク色の花。
一輪一輪、咲いてはいるが、まだ蕾もいくつかある。

その中から1番綺麗に咲いてる花をつまみ出す。
ふわっと鼻先を突くのは花独特の香。

機械的に「お花、買いますか?」と紡ぐ少女にお金を差し出すと、おつりも貰わずにスタスタと先へと歩いて行ってしまった。


「ジニア…か」


愛おしそうに呼んだのは先程買った花の名前。
この花言葉の意味を思い出し、指先に力を入れる。

少女はどんな意味を持ってる花か知っていて、渡したのだろうか。


「そしたら、相当可哀相な奴じゃん…
幸福なんて、いらないよ」

いつのまにか、指先で持っていた花は手の平の中にあり、押し潰されて弱ってきている。
そして、糸が切れたかのようにいくつもの花火がチラチラと舞っては地面にピンク色の模様を付けていた。

だが、それも一瞬で。
街行く人々に踏まれては汚れて行く。
はたして、先程この花を売った少女はこんな事になるだろうと、考えたのだろうか?

「君は今も孤独…?」

 




 
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