そんな中、ニナは街の中心部である広場にいた。
周りにはたくさんの子供達が遊んでいて、列車の中で聞いた噂話を思い出す。

だが、途中で聞こえて来たメロディに思考は停止してしまう。

だからだろう。まったく自分に話かけられている事には気付く事はなかった。否、気付く事ができなかった。


「聞こえるかい?おーい」

「あ、はい!聞こえてます!」


もう一度、心配に思ったのか呼び掛けられる。意識がはっきりしたニナは今度こそ、はっきりと応答をした。


「お嬢さん、大丈夫かい?
ぼーっとしていたもんだから…」


女性は顔を覗き込むように膝を折り曲げる。その時に女性のエメラルド色の瞳と目が合った。


「え?あ、大丈夫ですよ〜!」

笑顔で返すニナの表情はいつになく嬉しそう。

ここのところずっと一人でいたからだろう。長旅で列車の個室に篭っていた。だから、心配されるという事によりいっそう嬉しいと思ったのは。

エメラルド色の瞳が安心に満ち、微笑を浮かべる。

「それより、お嬢さん。変わった風貌だね。
旅人さんかい?」


 



 
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