「豊臣、秀吉……?」

「戦国時代、日ノ本を制した英傑です」


桔梗が先祖返りならば彼を知っているはずだ

そして大切なものが彼と関わりあるなら訪れる場所も自ずと決まってくる

豊臣関係の場所を巡ればいい


「わからない…が、知っている気がする」

「本当ですか!? もしそうなら希望がみえてきたかもしれません」


桔梗の言葉に春が身を乗り出す

彼女の記憶を取り戻せる可能性が確実になってきたかもしれない

なぜなら…


「?」

「ここは京都です。豊臣関係のものがたくさん残っていますから。まずはそうですね…」


京都には聚楽第、豊国神社など多くのものがある

今日行くのは…


「そうです! 今日は伏見城に行きませんか?」

「伏見城?」


伏見城は豊臣秀吉が息子とともに過ごした場所だ


「はい。ここからなら一時間くらいで行けますしどうでしょう??」

「そうだな。では行ってみよう」


決まれば即実行

二人は素早く支度をして最寄駅へと向かった







裏七軒を出発してから一時間ちょっと

二人は伏見城にやって来ていた

が着いて早々春はやってしまったと思っていた

確かに伏見城は豊臣秀吉と最も関わりが深かったがそれは関ヶ原の戦い前までの話だった

現代に残る伏見城は近現代に建てられた模擬天守だ

つまり、直接的には秀吉とは何の関係もないのだ


「ごごごごめんなさい桔梗」

「気にするな。だが折角ここまで来たんだ、観光して行こう」

「うう、はい」


桔梗の提案で二人は観光することにした

今日は冬休みに入ったからか若い人が多い

二人は石段を登っていく

登っていくと模擬天守が見えた


「大きいですね! 私、ここに来たことがなかったんですよ。でもこれって最近建てられたものなのですね。少し残念です。…桔梗? どこに行くんですか??」


模擬天守を眺めて感動しているといつの間にか隣にいた筈の桔梗がスタスタと歩き出していた

彼女は模擬天守を通り過ぎて真っ直ぐと歩いていく

春は突然の行動に驚きながらも桔梗の後を慌てて追いかける

どれくらい歩いただろうか

気がつくと模擬天守からは随分と離れた場所までやって来ていた

春はたくさん歩いたので息がきれていたが桔梗は息ひとつ乱れてはいなかった

ここは確か伏見城の武家屋敷があった場所だ


「桔梗…? どうしてここに??」


桔梗がついに立ち止まった

そこは昔のものなど何一つ残っていない

しかし彼女は何もない空間にそっと手を伸ばした



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